彼は魅惑のバレリーノ

モデル


約束を取り付けた、初めての金曜日。
私は仕事を早急に片づけて、ほとんど駆け出すように職場を出た。

き、緊張するな…
胸がざわざわして、呼吸が浅くなる。

インターホンを押すと、

「来たんだ、入って。」

扉が開き、柊くんが顔を出した。
その落ち着いた声に、少しだけ肩の力が抜ける。

「ありがとうございます。」

靴を脱いで中に入ると、二階建ての静かな家。
生活感はあるのに、どこか整っていて、空気が澄んでいる。

「こっち。」

案内された先は練習室だった。

大きな鏡が壁一面に広がり、
白いふわっとしたシャツに細身のズボン姿の柊くんが、
鏡越しにすっと立っている。


スタイル良すぎ。
思わず息をのむ。

「そこ座って。」

「ありがとうございます。」

言われた椅子に腰掛け、
持ってきたスケッチブックと鉛筆を取り出す。

手が少し震えている。
でも、胸の奥は不思議と温かかった。

今日から、描ける。
やっと、描ける。
う、嬉しい!!
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