彼は魅惑のバレリーノ

酔いしれる

日本公演まで、あと一ヶ月。
パンフレットとグッズが、ようやくすべて完成した。

印刷の匂いがまだ残るサンプルを机に並べ、最後のチェックを終えた瞬間——
部屋の空気がふっと軽くなる。

「よし、これで大丈夫だな。」

深山が書類を閉じ、静かに息を吐く。
その横顔は、ここ数週間の緊張がようやくほどけたように見えた。

「うん!」

思わず声が弾む。
肩に乗っていた重りが一気に落ちたような解放感。

そこへ、勢いよくドアが開く。

「ほら終わった? 飲み会いくわよ!」

亜季が顔をのぞかせ、にやりと笑う。
その明るさは、部屋の蛍光灯よりもずっと眩しい。

今回の仕事がひと段落したお祝いに加えて、退職するメンバーの送別会も兼ねた飲み会。
みんな、どこかそわそわしていた。

「なんか久々だよ、飲むの!」

「ねぇ! 飲もう飲もう!」

亜季はすでにテンションが高い。
その様子に、深山が後ろからゆっくり歩いてきて、苦笑しながら言う。

「あんまりハメ外すなよ。」

「はーいはーい」と手をひらひらさせる亜季。
その軽さに、深山は呆れたように眉を下げつつも、どこか楽しそうだ。
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