彼は魅惑のバレリーノ

綺麗な人だった。

指先の一本一本まで洗練されていて、しなやかな筋肉の動きも、まっすぐ伸びた立ち姿も、どれもが完璧。
目を離すなんて無理だった。

なんて…美しいんだろう。
こんな人、初めて見た。

その人は静かに、しかし確かな力を宿して踊っていた。
柔らかな身体が空気を切り裂き、まるで光をまとっているように見える。

翼が生えているみたいで、
本当に空へ羽ばたいていきそうだった。

――これって、バレエダンサー?

私は窓の外から、息をするのも忘れて見つめていた。

その瞬間だった。

踊っていた人物がふいにこちらを向き、視線がぶつかった。

淡い茶色の髪がさらりと揺れ、
端正な顔立ちが、まっすぐ私を射抜く。

「何か用ですか?」

窓を開け、肘をつきながら小首を傾げて問いかけてきた。


「す、すみません! 勝手にのぞいて…!」

私は慌てて頭を下げた。
心臓がばくばくして、言葉がうまくまとまらない。

「気にしないで。」

落ち着いた声が返ってくる。
その穏やかさに、余計に胸がざわついた。

「あ、あまりにも美しくて…思わず見惚れてしまいました!」

正直に言うと、彼は目をぱちくりさせてから、ふっと優しく微笑んだ。

「それはどうも。」

その笑顔に、胸がどきんと跳ねる。
さっきまでの舞よりも、ずっと近い距離で。

「あ、あの!」

「何ですか?」

息を整える暇もなく、私は叫んでいた。

「絵のモデルになってくれませんか!!」

気づけば、深々と頭を下げていた。
自分でも驚くほど勢い任せで、もう後には引けない。
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