彼は魅惑のバレリーノ

「では、お世話になりました。
また来週もお願いします!」

「ん、気をつけて。」

ゆるりとした声に見送られ、
私は家路についた。

玄関に入ってすぐ、
“着きました”とだけメッセージを送る。

数秒後、
猫のスタンプが返ってきた。

「猫好きなんだなぁ。」

思わず笑ってしまう。
あのクールな顔で、こんな可愛いスタンプを使うなんて。

お風呂に入りながら、
今日のことを思い返す。

ストレッチの姿。
踊るときの軽やかさ。
食卓での落ち着いた声。
大人びた顔。

全部が、胸の奥に残っていた。

明日は休みだ。
今日もらえたインスピレーションを、仕事にも活かすぞ。

そう思うと、自然と手が動いた。

デザイン画を考え、描き、
気づけば夜が更けていた。

週末が終わる頃には、
スケッチブックのページがいくつも埋まっていた。

そのどれにも、
あの日見た“羽のような動き”が宿っていた。
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