彼は魅惑のバレリーノ

ゼリーより甘い彼


週明け、私はデザイン画を抱えて打ち合わせに向かった。

「すごい良いですね。これでいきましょう。」

「ありがとうございます。」

胸をなでおろす。
久しぶりに“描けた”という実感があった。

「スランプ気味って聞いてたから心配したんですよ」

「あはは。
最近、素敵なものを見る機会がありまして。」

「いいですね、そういうの。
私も今推してる人がいまして。知ってます?
…戸神 柊 さん。バレエダンサーなんですけど!」

まさかの名前に、心臓が跳ねた。

「はい、最近知りました。」

声が裏返らなかったのが奇跡だ。

「この人、地元がこっちらしくて。
まだ先みたいですけど、公演するらしいんですよ!」

「へぇー。」

そういえば、公演があるって言ってた。
本当にすごい人なんだな。

「さて、そろそろ行きますね!
良いデザインありがとうございました。
あ、そうだ!これ、良かったら。
今週の日曜日までなんですけど、見に行ってきてください。」

差し出されたのは、美術館のチケット。
ちょうど行きたいと思っていたやつだ。

「わあ!ありがとうございます。」

「二人分あるので、彼氏さんとどうぞ!」

「いませんよ…そんな人。」

苦笑いしながら返すと、担当さんは「あら」と目を丸くした。

胸の奥が、じんわり熱くなる。

——二人分。
——誰と行くんだろう、私。
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