彼は魅惑のバレリーノ
「っていうか…一華。
あんたそんなことしてる場合じゃないでしょうに。」
亜季がコーヒーを置きながら、じとっとした目を向けてくる。
「わかってるよー。」
「ほんとに?
あんたのデザイン気に入ってたクライアント、最近の如月さんのイラストはイマイチだって言ってたわよ。」
「う。」
胸のあたりがぐさっと痛む。
そのクライアントの名前を聞くだけで胃が重くなる。
「このままだと切られちゃうよ。」
「ほんとわかってるんだけどさあ…」
私は雑誌を閉じて、ため息をひとつ。
「なんか、美しいものを取り入れて、新しい風を吹かしたいわけ。」
「はああ。」
亜季はわざとらしく大きくため息をつき、
ロングの髪を指先でくるくるしながら、あからさまに冷たい目を向けてきた。
「美しいもの探すのはいいけどさ。
締め切りは待ってくれないんだからね。」
その言い方が妙に現実的で、私は返す言葉に困ってしまう。