あやかし銀狼に恋をして〜じれ恋はやがて溺愛に包まれる
 そして登喜代が下りて来た後、しばらくすると黒のマウンテンパーカーに黒のトレッキングパンツを履いた瑠宇斗が下りて来た。
 「何してもかっこいいわぁ!ねぇ、瑞穂」
 「うん・・・も、もう、なに言わすのよっ!」
 「いいじゃない、本当のことだから。どれにするか迷ったのよねぇ」
 登喜代はチョイスした洋服を着た姿を想像してか、瑠宇斗を見てニコニコしている。
母の敦実はやはり登喜代似だ・・・と、ため息をついた。
 「瑞穂、これ、似合ってないか?」
 色気たっぷりな表情で問いかける瑠宇斗の真剣な眼差しが、ハートを貫く。
 穏やかに過ごすはずの日々が、極上イケメンと一緒に仕事をすることになるなんて・・・恋愛経験ゼロの瑞穂はあたふたしながらも、ゆっくり深呼吸をして、
 「す、凄く似合ってますよ、瑠宇斗さん」
 と、心の動揺を見抜かれないように返事をした。
 「そうか・・・良かった・・・ありがとう」
 少年のように喜ぶ笑顔が、一瞬、自分より年下に見えた瑞穂は思わず目を擦り、改めて自分より年上である瑠宇斗を確認した。

 それから、登喜代が店を案内しながら説明していると、
 「おはよう、登喜代さん」
 今日のお客さん第1号として、登喜代と同じ年代で常連の和子がお店を訪れた。
 「今日も美味しいお団子・・・あらっ?・・・あららっ?若い男の子がいるなんて珍しいわね?」
 「いらっしゃい、和子さん。こちらはね、今日からうちで働く瑠宇斗君よ。道案内や山道の安全を見守る仕事の傍ら、ここのお手伝いをしてくれるの」
 「まぁ、こんな素敵な人に道案内して貰えるの?私、この山道を歩くのが初めてだから、案内して貰おうかしら」
 和子は頬を染めて、にこやかにお願いしていた。瑞穂は嘘をつくとバチが当たりますよと言いかけたが、和子が真剣に懇願している姿を見て、口を噤んだ。
 「宜しくね、瑠宇斗君」
 「和子さん、宜しくお願いします」
 瑠宇斗の笑顔は和子の胸も射貫いたようで、すっかり乙女に戻って嬉しさのあまり、はしゃいでる和子を見て、
 「和子さん、ほどほどにしてよ。瑠宇斗君、少ししたらこっち手伝って」
 登喜代は予想していた通りの結果に、少しの時間だけ和子に瑠宇斗独占時間の猶予を与え、仕事に戻って行った。

 こうして瑠宇斗は、今日からときよ屋の一員として、瑞穂と一緒に働く日々が始まった。
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