あやかし銀狼に恋をして〜じれ恋はやがて溺愛に包まれる
 瑠宇斗はあやかしに戻ると、百花のいる喜見山に向かった。
 「百花、こんな所にいたのか」
 百花は権蔵といつも会っていた場所にある大きな石の上に腰掛けていた。
 「瑠宇斗・・・どうしたの?ここは私の縄張りよ?」
 「どうしたのって、お前、信司君と会う約束しただろ?」
 「約束?違うわよ。向こうが一方的に待ってるって言っただけよ。私は必ず行くって言って無いわ」
 「百花からそんな言葉を聞くとは思わなかったよ」
 「どういうことよ」
 「お前が1番知ってるはずだろ?来ないことが分かっていても・・・それでも、もしかしてその人が来るかもしれないと待つ思いを」
 はっ!とした顔をした百花は、自分の過去を思い出す。

 権蔵は、いつ来るか分からなかった。でも、もしかして近くまで来ているかもしれない。そう思って、そこから立ち去ることが出来なかった。日が昇ってから暗くなるまで毎日、大好きな人にひと目会いたいために、一時もその場から離れられなかった・・・そう、いつも待っていた。この場所でずっと・・・
 「お前の気持ちはよく分かる。ただ、自分が大切な人だと思うなら会ってやれ。もしそうじゃないなら、2度と彼の前に姿を現すな」
 それだけ言うと瑠宇斗は姿を消した。

 行ってどうするのよ・・・自分は弱いくせに、男達に囲まれた私を守ろうとした馬鹿な男なのに・・・
 猫に化けて様子を見に行った時、私を撫でて、「可愛いな。彼女に何となく似てる」と撫でてくれたこと。
 権蔵が奥さんを思い、花を摘んでいったように、私が気まぐれで言った嘘の誕生日に花をくれたこと・・・
 信司は・・・優しくて心の強い男だ・・・
 例え少しの間だけでも・・・一緒に過ごした幸せな時間と温もりはずっと心に残る。権蔵がそれを教えてくれたのに・・・
 急がないと・・・

 🐺🐺🐺
 「は、はぁ~い・・・って、遅れてごめんね」
 「百花さん!ううん、大丈夫です!さぁ、座ってください」
 「う、うん・・・」
 百花は店に戻っていた瑠宇斗に目線を向けたが、目を合わすことなく瑞穂と話をしていた。
 「信司・・・私さ、こんな性格だけど・・・信司と一緒に色々話をするのが楽しいの。だから、また誘ってね。次は遅れないようにするから・・・えっと・・・遅れることはあるかもしれないけど、出来るだけ早く会いに来るから」
 「はいっ!僕、待ってますから。あっ、でも無理しないでください!来れなくても大丈夫だから。僕、また山に会いに行きます!少しでもいいから、顔を見せて下さい!」
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