あやかし銀狼に恋をして〜じれ恋はやがて溺愛に包まれる
 それからしばらくすると、背中に藤野をおぶった瑠宇斗が店に戻って来た。
 「瑠宇斗さん・・・」
 「藤野さんが足を滑らせて捻挫したんだ。病院に行ってくるよ」
 「大丈夫ですよ。たいしたこと無いですし、1人で歩けますから」
 「いえ、一緒に行きます。準備をしますので少しだけ待っていてくださいね」
 瑠宇斗が慌てて2階に上がると、瑞穂も上がってきた。
 「瑞穂、店は頼むよ」
 「送って行くんですか?」
 「俺のせいで彼女は捻挫しているんだ。放っておくわけにはいかない」
 「でも、たいした事無いって・・・」
 「俺が最後まで目を離さなければ・・・彼女を送って来る」
 急いで準備をした瑠宇斗は、瑞穂を見ることなく、1階へ下り、瑞穂も続いた。
 「お待たせしました。大丈夫ですか?藤野さん」
 「はい・・・大丈夫です。私が足元をよく見てなかっただけで、瑠宇斗さんに責任は無いですから」
 「いえ、俺の目の前で起きたことは俺の責任です。さぁ、行きましょう。病院で診察した後、家まで送りますから」
 瑠宇斗は肩を貸し、藤野を支えながら店を出た。
 それから病院に時間が掛かったようで、キゼラから登喜代に、店に寄らずに帰ると電話があり、瑞穂と顔を合わさなかった。

 それから3日間、瑠宇斗が山の見回りから帰って来ると、覚えのある香りがした。
 その香りはキゼラの店内に置かれているお香と同じ・・・胸が・・・締め付けられる。
 「遅かったですね・・・」
 「キゼラに行って来たんだ」
 「藤野さん・・・ですよね」
 「あぁ。藤野さん、腫れも引いてきて、だいぶ良くなったみたいで安心したよ」
 「それだけ・・・ですよね」
 「もちろん。どうして?」
 「いえ・・・」
 「じゃあ、帰るよ」
 「瑠宇斗さん、お話が・・・」
 「・・・悪いが、今日は東北に行ったことで癒怒之神様と緑運さんとで色々話をしないといけないんだ」
 「そ、そうですか」
 帰ろうとした瑠宇斗は、瑞穂に背を向けたまま、
 「藤野さんのことで頭がいっぱいだったから、すまない。明日聞くよ。俺も話があるから・・・店が終わったら2階で話をしよう」
 瑠宇斗は瑞穂を見ることなく、そのまま山に帰って行った。
 「藤野さんのことで頭がいっぱい・・・話ってもしかして・・・」
 東北から帰って来た日、藤野が怪我をして毎日会いに行きだしてから、瑠宇斗の様子に異変を感じていた瑞穂は、嫌な予感がした。
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