あやかし銀狼に恋をして〜じれ恋はやがて溺愛に包まれる
 「俺は自分のことしか考えてなかった・・・篤志さんの時も、ただ嫉妬心が抑えられずに・・・瑞穂の人生・・・色々な経験が出来る環境があるんだ。その機会を逃してはいけない。限りある時間、瑞穂から今しか出来ない事を、ご両親の期待を奪う権利は俺には無い」
 「いや・・・帰らない。瑠宇斗さんとここにいることが私の望むことだもの。私の人生だよ?両親は関係無い!」
 瑠宇斗は首を横に振った。
 「ご両親の元に帰るんだ」
 頑なに親元に帰ることを進める瑠宇斗の言葉に、藤野との会話が頭に過ぎった。もしかしてと思っても信じたくないから、閉ざそうとした2人の会話・・・藤野を見舞っているうちにもしかして2人は・・・
 「瑠宇斗さん・・・もしかして・・・私がいなくなった方が、都合がいいからですか?・・・私じゃダメなんですか・・・」
 瑠宇斗は、瑞穂の言っていることが理解出来なかったが、これ以上涙を流す瑞穂を見ると、自分の覚悟が揺らぐと、そのことには触れず、瑠宇斗は拳を握り締めた。
 「・・・瑞穂、別れよう。もう瑞穂の前には現れない。ありがとう・・・瑞穂・・・さようなら」
 瑠宇斗はあやかしの姿になり、瑞穂の前から消えてしまった・・・

 「瑠宇斗さん・・・言い訳しなかった・・・やっぱり藤野さんのこと・・・好きになっちゃったんだ・・・」

 🐺🐺🐺
 それから瑠宇斗は、店に来なかった。
 いつもみたいに、「瑞穂、おはよう」と優しく微笑んで来るかもと、足音がする度に入り口に目を向けてもその姿は無かった。

 瑠宇斗は別れを告げた日の夜、登喜代に会いに来ていたのを瑞穂は知らない。
 「登喜代さん。実は、瑞穂のお父さんが来られた時、瑞穂との会話を2階で聞きました。東京に戻ることは、瑞穂を思ってのことだと思います。俺と一緒にいても・・・瑞穂が東京に帰ったら、また顔を出します」
 そう声を掛けていた。

 「瑞穂ちゃん、一旦、家に戻りなさい。お父さんとお母さんとゆっくり話をして、これからの生き方に目を向ける時間を持ちなさい。きっと、答えが見えて来るから。私はこんなことしか言えないけど、瑞穂ちゃんの味方よ」
 「うん・・・明日、帰るね。登喜ばぁ・・・ありがとう・・・」
 瑞穂は登喜代に抱きつき、しばらく声を出して泣いた。
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