あやかし銀狼に恋をして〜じれ恋はやがて溺愛に包まれる
 「瑠宇斗、瑞穂の方は大丈夫なのか?」
 「別れるのを嫌がる瑞穂に一方的に別れを告げましたし、親御さんは海外へ行くことを進めています。でも、無理を承知で気持ちを伝えるつもりです。もう1度、瑞穂に告白します」
 「分かった。では、私も瑠宇斗が人間になる時のために、手配は進める。今夜、瑠宇斗の情報をまとめるための打ち合わせをしよう」
 「本当に・・・ありがとうございます」
 「心配するな。瑠宇斗のように命を受けて人間社会に潜り混んでいるあやかしは、世界中にいるから大丈夫だ」
 「では、明日の夜、瑞穂の所に行きます。夜なら家にいるでしょうから」
 「では、また今夜ここで」
 緑運はその言葉を告げると同時に、姿を消した。

 瑠宇斗は瑞穂と別れてからも、ときよ屋へ来る前の時と同じように、山や町を見守っていた。何百年も神使として務め、冷静沈着に何事にも動じず過ごすことが、当たり前の日々だったのに・・・
 それが瑞穂と出会って過ごすことで、感情の揺れが生じ始めた。母を慕う情でもなく、人々を守るという情でもなく、初めて理性を失いそうになり、自分自身でコントロールが出来ない感情・・・特別な存在・・・自分から別れを告げたはずなのに、失ってより大切な存在だと身に染みた。

 翌日の夜になり、瑠宇斗は雲1つ無い夜空に浮かぶ月を見上げ、覚悟を決めると、空に駆け出し、瑞穂のいる東京に向かった。
 町の光で明るい空に、多くの人々の善と悪、陽と陰の気が混じり合う東京の空を駆け巡る。
 登喜代に教えてもらった辺り一帯は、静かな住宅街で瑞穂の気配だけに集中すると、ある家の2階からそれを感じ取れた。近づくにつれ胸が締め付けられる、愛しい気・・・
 瑠宇斗はベランダに立ち降りた。
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