あやかし銀狼に恋をして〜じれ恋はやがて溺愛に包まれる
 敦実は晴之が帰ったことを確認し、瑞穂と一緒に徳次がいるリビングのドアを開けた。
 「ねぇ、あなた。瑞穂の話を聞いてあげて」
 「晴之君の前で、あんな態度を取って。聞き分けのいい瑞穂がこんな風になるなら、もっと早く連れ戻せば良かった」
 瑠宇斗を非難された言葉と受け取った瑞穂は、また感情が膨れ上がり、怒りが込み上げた。
 何も・・・何も知らないくせに・・・
 瑞穂が怒りの言葉を浴びせようと息を吸った瞬間、
 「あなたっ!瑞穂の話も聞かず、瑞穂を責めないで!どうして可愛い娘の気持ちを考えないのよ!」
 声を荒立てたのは、敦実だった。
 「母さん・・・」
 「お父さんは、瑞穂が家に帰って来てから、瑞穂の笑顔を見たことがある?笑い声を聞いたことは?」
 「いや・・・そういえば・・・」
 「あんなに毎日笑っていた瑞穂の笑顔を奪っているのは誰でも無い、私達なのよ!」
 「それは一時的なものだ。カナダに行けば・・・」
 「お父さん、瑞穂には大切な人がいるのよ!その話をさせてあげる間もなく、晴之君との話を進めて勝手に盛り上がってどうするのよ!」
 「瑞穂・・・それは本当か?」
 自分の怒りの気持ちを敦実が声を荒立てて話してくれたことで、瑞穂は冷静になっていた。
 「そうよ、お父さん。私はときよ屋で仕事をして、好きな人、瑠宇斗さんに出逢ってから、とても幸せな日々を過ごしたの。色々なことがあったけど、親友が出来て、時間の大切さと生きることの素晴らしさを教えてもらったの。目に見えないものにも、私達は生かされていることの素晴らしさも・・・」
 瑞穂は、『私はお父さんのご先祖様の不思議な力を受け継いでいる』と言いたいけど、それは伏せておこうと口を閉ざした。
 「ねぇ、お父さん。瑞穂は瑞穂なりに自分の人生を考える力を得たのよ。素晴らしい時間だったのよ」
 「・・・その、瑠宇斗君とはどういう関係だ?」
 「愛してるの。結婚したいと思ってる」
 「結婚?そこまで考えているのか?」
 「うん。お父さんが反対するなら・・・私、もう2度とここには戻って来ない」
 徳次は、無邪気な瑞穂が、突然、好きな人が出来ただけじゃなく、『結婚』という言葉を口にし、反対したら戻って来ないと言われ、あまりのショックにしばらく言葉が出なかった。
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