あやかし銀狼に恋をして〜じれ恋はやがて溺愛に包まれる
 「・・・えっ・・・な、何だ!?・・・んっ?凄い爪だ・・・毛だらけだし・・・えっ?!こ、これは尻尾か?」
 達之助は違和感があるお尻あたりに力を入れると、銀白色で毛が長くフサフサした、2mはある大きな尻尾が上下左右に動いていた。
 「は、ははっ!俺に尻尾が生えてる!そうか、夢か!夢を見ている場合じゃないんだ!目を覚ませ、俺っ!」
 達之助は夢から目を覚まそうと、毛むくじゃらの前足で頬を叩くと、痛みが走った。
 「イタッ!あれ?痛みがあるのに、まだ目が覚めないぞ!」
 もう1度叩いても、大きな尻尾が目の前で揺らいでる。
 それを見ていた緑運は、自分が眠りから覚めていないと勘違いしている達之助を落ち着かせようと、静かに声をかけた。
 「落ち着け達之助。これは現実で夢ではないぞ」
 達之助は、声がした方にゆっくりと首を動かし緑運を見ると、更に叫んだ。
 「し、し、鹿が・・・しゃ、しゃべってる・・・こ、こんなところで夢を見てる場合じゃないのに!早く目覚めろよ!!」
 達之助は、力一杯頬を叩くと、自分の力で吹っ飛んでしまった。
 「夢ではないぞ。私は神獣の緑運だ。それと、尋常じゃない力なんだから加減しろ」
 「で、でも、俺が毛だらけで、鹿がしゃべって」
 「落ち着けと言っとるだろ!!」
 一喝されて大人しくなった達之助に、緑運はここに来てからのことを説明した。

 「・・・か・・・母さん・・・」
 「心配するな。同じ長屋の人達が弔ってくれたようだ」
 「・・・母さん・・・ごめんね・・・助けられなかった・・・」
 「目が覚めたようだな」
 達之助達の目の前に、どこからともなく癒怒之神が現れた。
 「はい、癒恐之神様。母親のことも・・・今伝えたところです」
 「そうか・・・本来、人を神使として迎えいれることなどは出来ないのだが・・・この緑運のたっての願いだ。緑運は、神が生み出した神獣だが、達之助はあやかしとして私に仕えなさい。よいな?」
 「俺は・・・そんなこと急に言われても・・・」
 達之助は母が亡くなり、自分はあやかしになったと聞かされ、目の前には突然、山の神様と神獣が現れ、神使として仕えるように言われて戸惑っていた。
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