あやかし銀狼に恋をして〜じれ恋はやがて溺愛に包まれる
 「実は瑠宇斗が来る少し前にもこのようなことがあってな。その時、何処からか『ふみ』という娘がやって来て、体が光るとその光が足元から山に流れ込み、邪気を包み込んで消滅させたのだ」 
「娘・・・人・・・ですか?」
 「あぁ、そうだ。陰陽師の血筋だと言っていた。悪い気の流れを辿って来たらしい。『この土地が汚れた時は、必ず来るから』と娘は笑顔で立ち去った。当たり前だが、もうこの世にはいない。ただ・・・子孫にその力が受け継がれているかもしれない。その子孫を探して欲しいのだ」
 「子孫・・・ですか・・・」
 「同じ気を持つものを探したが、一向に見つからない。もしかして、その力は途絶えたのかもしれない。ただ、もしこの世に子孫がいたならば、一縷の望みに賭けるしかない」
 「見つかったとしても、その力が受け継がれてないかもしれませんね・・・」
 「そうであれば・・・・・1年後には木々達は朽ち、水脈は枯渇する。その時が来たならば、他の神に町を任せ、緑運と瑠宇斗と共に出雲に来るようにと言われているのだ」
 「・・・分かりました。私もこの山を失いたくありません」
 「人の姿の方が情報を得やすいだろう。山道の入り口にある『ときよ屋』という休憩所だが、知っておるな?」
 「はい。たしか登喜代という店主の・・・」
 「そうだ。そこで働き、神使としての仕事と『ふみ』の子孫を見つけ出して欲しい」
 「ふみの子孫であるというのが、どうすれば分かるのでしょうか?」
 「体から紫と白が混ざり合った光を放っていた。それだけしか分からない」
 「では、少しでもその光を放つ者がいれば連れて来ます」
 2人のやり取りを見ていた緑運は、心配そうに瑠宇斗に近づいて来た。
 「瑠宇斗。妖力で実体化した衣服は問題ないが、人間界の服を来た時は気を付けろ。あやかしになったら破れてしまうからな。人間から見れば、服がちぎれた瞬間、瑠宇斗が消えてしまい、大騒ぎになる。飯は食っても問題ないとはいえ、食い過ぎには注意しろ。それから・・・」
 「分かってますよ、緑運さん。俺は毎日こっちに戻りますから、そんなに心配しなくても」
 「そ、そうだったな。我が子を送り出す親の気持ちが分かるよ。困ったことがあれば、いつでも呼ぶんだぞ」
 「ありがとございます、緑運さん」
 瑠宇斗は緑運に頭を下げて、癒怒之神の前に立った。
 「頼んだぞ。瑠宇斗」
 「はい、癒怒之神様」
 こうして、あやかし神使の瑠宇斗は『神元瑠宇斗』として、登喜代の店へと向かった。
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