あやかし銀狼に恋をして〜じれ恋はやがて溺愛に包まれる
 その時、羽瑠が何かを見つけ、瑠宇斗の手を引っ張り手招きして、かがんだ瑠宇斗が顔を近づけると、小さな声で耳打ちした。
 「パパ・・・あそこ、くろいものがグルグルしてる・・・」
 「・・・本当だな・・・ママと瑠花には内緒だぞ?」
 「うん、わかった」
 瑠宇斗は羽瑠の頭を撫でると、強志を呼び、黒い渦のことを確認した。
 「強志さん、あそこの小さい石が積んである場所の黒い渦は?」
 「あれが見えるか?それなら話が早い。あそこは昔、大きな桜の木があってなぁ・・・目印のために誰かが石を積んでいたようだ。嬉しい時も悲しい時も人々はその桜を見つめながら語り掛けていた。木は燃えてしまってもその念は残り、田畑を失った人々の失意と絶望と一緒にこの場所に留まっているんだ」
 「もしかして・・・あれがこの土地を縛っている?あれくらいなら、強志さんなら浄化出来るでしょ?」
 「あれは、この土地の奥に眠っている念が溢れてきたんだ。癒怒山より強大だ。そして、あれを完全に浄化出来るのは、ふみの力を受け継ぐ瑞穂ちゃんしかいない。しかし・・・」
 強志は、瑞穂や羽瑠達が仲良く笑顔で話しているのを見て、自分の野望のために、やはりこの家族を危険にさらすことは出来ないと、止める覚悟をした。
 「瑞穂ちゃん・・・やっぱり・・・」
 「強志さん、出来るか分かりませんが、恩返しをさせてください!」
 「瑞穂ちゃん・・・ありがとう・・・でもやっぱり・・・」
 「大丈夫です!私は、ふみさんの末裔ですから!」
 強志は瑞穂の強さに、やはりあのふみの末裔であり、瑠宇斗が惚れただけあると、気持ちを固めた。
 「いいか、瑞穂ちゃん。無理だと思ったら、直ぐに諦めて逃げるんだ。必ず守ってくれるか?」
 「はいっ!一目散に逃げますから心配しないでください!」
 「約束だぞ・・・あそこに石が積んであるだろ?あそこで癒怒山でしたように試してくれ」
 「やってみます。羽瑠、パパと待っててね。じゃあ、灯樹さん、瑠花をお願いします」
 瑠花を灯樹に渡すと、瑞穂は羽瑠の頭を撫で、瑠宇斗に、
 「行って来ます」
 と、声を掛けて、黒い渦が巻く、石が積まれた場所へ歩いて行った。
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