あやかし銀狼に恋をして〜じれ恋はやがて溺愛に包まれる
 「ただいま、瑞穂」
 「はい・・・」
 瑠宇斗の顔を見ることなく、その返事をしただけで、瑞穂はテーブルの同じ所を何度も拭いていた。
 「瑞穂、どうかしたのか?さっきから怒ってるだろ?」
 「怒ってません!」
 「ほら、怒ってる。どうしたか俺に話せよ。話したらすっきりするだろ?」
 「本人に言える訳ないでしょ!あっ・・・」
 「俺が・・・何かしたか?」
 「・・・さっきの女の人と2階で・・・やっぱり、もういいです!」
 「2階で?あぁ・・・彼女と2人きりになりたかったからだが・・・」
 「わ、分かってます!」
 2人きり・・・またさっきの妄想が頭に浮かび上がった。

 その時、瑠宇斗が戻ってきたのに気づいた登喜代がお店に出ていた。
 「瑠宇斗君。ありがとう。あの人に取り憑いていた生き霊、取れた?」
 「はい、何人も男性を騙していたようでしたね。警察に連れて行きました。先に帰った男性にも連絡先は聞いていたので、のちに警察から連絡が行くでしょう」
 「そう、ありがとう。私は見えるけど、払うことが出来なくて」
 「俺も初めてでしたけど、話を聞いたら消えていきました」
 本当は、女性を気絶させて生き霊達に話を聞いた後も、仕返しするまでは離れないと暴れ出しだが、瑠宇斗があやかしの姿で説得すると、消えていったのだ。
 「瑞穂、まだ怒ってる?」
 「怒って・・・怒ってません。瑠宇斗さんも登喜ばぁと同じように、見えることにビックリはしていますが・・・」
 「見えることを黙っていたのはすまない。怖がると思ったから」
 「怖い・・・怖いですけど、登喜ばぁで慣れてますから・・・ただ・・・」
 「ただ?」
 「さっきの人、綺麗な女性でしたね・・・」
 怒っていた理由は、さっきの人に嫉妬したから・・・そんな事は言えない。
 「綺麗?醜いだろ?」
 「えっ・・・?」
 「綺麗な女性っていうのは、瑞穂みたいな人だよ」
 この人は・・・サラッとこういうことを言う・・・ズルい。瑞穂は恥ずかしくて顔が火照るのが分かるほど、照れていた。
 「あぁー、それと、登喜代さんもだな」
 真顔で言う瑠宇斗を見て、勝手に自分が特別な存在かもと勘違いした瑞穂は、いつも瑠宇斗の言葉に一喜一憂する自分に腹を立てていた。
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