あやかし銀狼に恋をして〜じれ恋はやがて溺愛に包まれる
 「何だ?やっぱり怒ってるだろ?」
 「もぉー、知りません!」
 「どうして瑞穂の機嫌が悪いのか分からないが、どうして欲しい?」
 「こ、これからはマスクを着けてください!感染症対策です!」
 感染対策?あやかしには絶対に必要ないだろ・・・そう思う瑠宇斗だったが・・・
 「マスクね・・・じゃあ、瑞穂も」
 「わ、私は頑丈だから大丈夫です」
 「頑丈って問題じゃないだろ?」
 真剣な眼差しで見つめられ、嘘をついた自分に後ろめたさを感じた瑞穂は、
 「・・・本当は・・・お客さんがお店に来てくれるのはありがたいですけど、瑠宇斗さん目当てで来られるのが・・・嫌なんです・・・さっきの人みたいに・・・」
 と、正直に自分の気持ちを伝えた。
 「分かった。じゃあ、瑞穂もマスクしろよ」
 「私は別にしなくても・・・」
 「瑞穂目当てでくる客が来たら、俺も嫌だから・・・ほら」
 マスクを取り出して、瑞穂の両耳に紐を掛けた。
 「・・・うーん・・・これだと、俺まで瑞穂の顔が見れなくなる・・・俺といる時は外せよ、いいな?」
 瑠宇斗は自分用のマスクを取って付けると、
 「山の方を見てくるよ」
 と、瑞穂の頭を撫でたあと、店を出て行った。
 「私を目当てに・・・嫌って・・・それって嫉妬・・・なの?顔が見れなくなるってどういう意味?ねぇ、瑠宇斗さん・・・」
 鼓動が賑やかに跳ね体温が上昇する体に、しばらく誰もいない入り口を呆然と見つめていた。

 こうして、その日から瑠宇斗は営業時間中にマスクをしていたが、数日後・・・
 「ねぇ、さすがにもう風邪は治ったでしょ?!瑠宇斗君の顔を見ることが、私の元気の源なのよ!ちょっと、登喜代さん!あなたが命令してるの?!まさか、瑞穂ちゃんじゃないわよね?!ちょっと、2人とも聞いてる?」
 来る度にこの会話から始まる和子さん責めに、瑠宇斗はマスクをしなくなり、マスクの箱は2階の棚の上にポツンと置かれていた。
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