あやかし銀狼に恋をして〜じれ恋はやがて溺愛に包まれる
【恋の始まり】
 瑞穂の父である天宮徳次(あまみや のりつぐ)は生まれも育ちも東京で、大学を卒業後、そのまま都内に本社を構える大手商社に就職。母である守山敦実(もりやま あつみ)とは大学時代に知り合い、母から告白して付き合って、結婚に至った。
 徳次は実直で面倒見が良く、部下に慕われて今は管理部長として忙しくしている。敦実は明るく、いつも瑞穂の応援をしている。そして、徳次のことが大好きだ。
 「瑞穂が大学を卒業したら、お父さんと2人きりでどこかに旅行に行こうかしら?そうだ!部屋に専用の露天風呂がある旅館がいいわ!ねっ、お父さん?」
 その言葉を聞いた徳次は、無言だけど耳が真っ赤になっている。
 「ねぇ、お父さん!聞いてるの?」
 「聞いてるよ・・・瑞穂の前でまったく・・・分かったよ。どこか探しておくから」
 「ありがとう、お父さん!大好き!」
 瑞穂の前で、敦実が徳次に抱きつく姿はいつものことだ。喧嘩をしたり、大きな声で言い合っている姿を見たことが無い。結婚したら、2人のような家庭を築きたい。そう思うけど、そもそも姿を見かけるだけで、その人の声を聞くだけで、その人を思うだけでドキドキするような経験すらしたことが無い。
 素敵だなぁって思う先輩はいたけど、そういう人には必ず彼女がいて、恋が始まるに至らないのだ。

 そんな彼氏いない歴22年の瑞穂は、大学を卒業し、4月から晴れて社会人!のはずだったが・・・
 就活し始めた頃、何社か面接を受けたが、企業側の台本通りのような質問に、面接官受けを狙って返答を流暢に話す自分に虚しさを感じ、今のうちに語学を学んで幅広く活躍したいと両親を説得したのだ。
 「まぁ、若いうちに何でも経験する選択も悪く無い。語学なら・・・まずはカナダに行ってみたらどうだ?身内の家なら安心だろ?」
 徳次の勧めで、大学を卒業したら5か月間ほど、叔母にあたる徳次の妹が住むカナダに行く予定だ。
 瑞穂は日本を離れる前に、大学の卒業式の明くる日から1か月間、敦実の母である祖母の登喜代の家に行くことになった。
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