あやかし銀狼に恋をして〜じれ恋はやがて溺愛に包まれる
 「綺麗ですねぇ」
 近づいて桜を見上げると、瑠宇斗は瑞穂を見ることなく、桜を見つめていた。
 「あぁ・・・こうやって桜を見るのが毎年楽しみなんだ」
 瑠宇斗の愛おしそうに桜を見る横顔は、とても美しい・・・顔だけじゃない。芯が強くて、優しい。誰でも好きになっちゃうよ・・・あまり見過ぎると気持ちに気づかれてしまうと、瑞穂はまた桜を見上げた。
 「来年も瑠宇斗さんと一緒に見れるといいなぁ・・・」
 「・・・俺がここにいられるのは、長くても1年だけなんだ」
 落ちる桜の花びらを手に乗せると、そっと包み込んだ瑠宇斗の横顔は険しかった。
 「えっ・・・その後は、どこに行くの?」
 「分からない・・・」
 「分からないって・・・」
 「・・・まだ決めてないんだ」
 瑠宇斗は、この山は朽ちるかもしれないとは言えず、そう答えるしかなかった。
 「それなら、ずっとここで働くっていうのは・・・」
 「そうしたくても、出来ない・・・出来ないんだ」
 「・・・でも、まだあと1年もあるし、何かいい方法が」
 「悪いけどこの話は終りだ」
 「は、はい・・・」
 先に歩く瑠宇斗の後ろ姿を見て、胸が苦しい。長くても1年・・・ということは明日にも別れが来るかもしれないってこと?もう、この気持ちは消し去ることが出来ないのに・・・
 「瑞穂」
 振り向いた瑠宇斗は、優しく微笑み声をかけた。
 「登喜代さんが帰ってくるまで、まだ時間はあるし、町に買い物に行こうか」
 突然の誘いに、戸惑ったけど、
 「は、はい!行きたいです!」
 瑞穂は寂しさを打ち消すような誘いに、元気よく答えた。

 2人は歩いて5分ほどにあるバス停に着いた。そこから20分ほどバスに乗ると、駅があり周辺には商店街や色々な専門店がある。
 バスに乗ると、瑠宇斗は外を眺めていた。自分が人間だった頃、道は石だらけで、わら草履は役に立たないくらいボロボロになり、裸足で歩く時もあってよく怪我をしていた。今は食べながら歩いたり、写真を撮ったり、綺麗な服を着て、幸せな笑顔が溢れている。何よりも直ぐ近くに病院があって、薬局もある。母の病気も、今なら治せただろうと思い耽っていた。
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