あやかし銀狼に恋をして〜じれ恋はやがて溺愛に包まれる
【優しくて悲しい嘘】
3か月が過ぎ、お店にも慣れて来た瑞穂と瑠宇斗。
瑠宇斗は、時々、登喜代に買い物を頼まれて町に出掛けた時、ふみの子孫も探しながら店を歩いた。
「私も一緒に行こうかなぁ?」
「何言ってるの!瑞穂はお店の準備をして!瑠宇斗君、悪いけど、お砂糖お願いね」
「大丈夫です。瑞穂、登喜代さんの言うこと聞くんだぞ」
「いつも聞いています!」
「そう拗ねるな、直ぐ戻って来るよ」
瑞穂の気持ちを知るよしもなく、瑠宇斗はバス停に向かった。
瑠宇斗はバスに乗るのが大好きだ。
決まった時間に目の前に止まって、目的地の停留所まで行ってくれる。色々な人が乗ってきて、席を譲り合ったり・・・あやかしの姿の時は、一瞬で駆け巡る町も、こうやって眺めていると色々な風景が目に止まる。
人間のころ、大小さまざまな石ころの上をガタガタと音を立てて、揺れる荷車を引いて荷物を運んだ。
人間だった最後のあの日も、寒い中、荷車を押してお団子を貰ったんだ・・・あやかしとして母との約束を守ると決めた日。
もう、あれから長い、長い年月が過ぎた。
便利になったことが当たり前の日々。幸せである分と同じくらい、妬みや邪心、悪意はある。それが自然を壊すほど蓄積してきたのだ。
買い物が終わり、バスに乗って外を眺めていると、川の土手で1人の男性が座っていた。その横で女性が立っているが・・・あれは・・・瑠宇斗は慌てて次のバス停で降りた。
「すみません。隣いいですか?」
「え、えぇ。どうぞ」
さっき見た男性に声を掛けた。その隣にいた女性は瑠宇斗が目を合わせて頷くと、少しビックリした表情で会釈した。
「とても綺麗な風景ですね。いつもここへ?」
「そうですね・・・ここは大切な場所なんです」
遠くを見る男性は涙を浮かべていた。
横にいる女性はもう亡くなっていて、男性の隣に座って悲しそうな顔をしている。
「亡くなった大切な人との思い出の場所・・・ですか?」
「どうしてそれを・・・」
「実は俺、霊感っていうものがあって・・・亡くなった人が見えるんです」
「えっ・・・もしかして佳美(よしみ)が、僕のそばにいるんですか?」
隣の女性はうなずいていた。
「はい、佳美さんという方です」
それを聞いた男性の目から、大粒の涙が零れだした。
「佳美は・・・佳美は、大学の時に付き合っていた彼女です。些細なことで喧嘩別れして・・・でも、1年前、再会したんです。それから、また一緒に御飯を食べたりして・・・やっぱり佳美のことが好きで告白したんです。そしたら、待って欲しいって・・・」
瑠宇斗が佳美を見ると、辛そうに俯いていた。
「毎日連絡して、何度か会って・・・そろそろ答えを聞こうとした時、彼女から急に遠くに行く事になったから、付き合えないって・・・悔しくて、僕のことが嫌ならハッキリ断れよ!って・・・それっきり連絡をしなかったんです」
「それから彼女さんとは・・・?」
「・・・先日、佳美のお母さんから電話が掛かって来て・・・2か月前に亡くなったって・・・日記に・・・日記に本当は俺と付き合いたかったって・・・色んな所に遊びに行きたかった、手を・・・繋ぎたかった・・・それから・・・」
男性は我慢出来ず、泣き崩れてしまった。
隣にいる佳美もとても悲しそうに、触れる事が出来ない彼の背中に手を差し伸べる。
「佳美さん・・・彼に伝えることは?」
佳美は、自分の思いを瑠宇斗に伝えた。