あやかし銀狼に恋をして〜じれ恋はやがて溺愛に包まれる
 「はぁ~い、瑠宇斗」
 片肘をつき、笑顔で手を振る女性を見て、瑠宇斗はため息をついた。
 「百花・・・さっき帰ったはずだろ?何しに来たんだ?」
 そう、女性の正体は人間に化けた百花だった。
 「どうしてって冷たい。私達の仲なのに」
 その言葉を聞いた瑞穂は、俯いた。
 「あれっ?言っちゃダメだったかしら。私達の仲」
 「仕事の邪魔をするなら帰れ!」
 「いいじゃない、ねぇ?」
 百花は同意を得るよう瑞穂に言葉を投げかけたあと、意味ありげに含み笑いをした。
 「え、えぇ・・・どうぞごゆっくり。る、瑠宇斗さんもどうぞ。お店のことは私がしますので」
 「じゃあ、悪いが頼む。話は外でするから。百花、ちょっと」
 「はいはい」
 瑠宇斗が入り口に向かって歩き出すと、百花が瑞穂のそばに来た。
 「昔から、あぁ見えて照れ屋なのよね・・・私は何でも知ってるのよ、瑠宇斗のことは。今夜は久々に2人でゆっくり過ごすわ・・・大人の時間をね」
 耳元で囁くとウィンクして髪をなびかせ、外に出て行った。
 2人で今夜、大人の時間を過ごす・・・経験の無い瑞穂でもその意味は理解出来た。あんなにカッコいいんだから、彼女がいて当たり前。分かっていても、嫉妬と寂しさで胸が締め付けられた。

 🐺🐺🐺
 「さっき帰ったはずだろう?瑞穂の様子がおかしいが何を話した?」
 「帰るついでに立ち寄っただけよ。瑞穂って呼んでるのね・・・私達2人の仲を話しただけよ、昔からの長い付き合いだって」
 「余計なことを・・・言っただろ!神使としての任務があるんだ。邪魔をするなよ」
 「分かったわよぉー、もぉーそんなに怒らなくても・・・」
 その時、店の中から瑞穂が見ていることに、百花は気づいた。
 「じゃあね、瑠宇斗」
 百花は瑠宇斗の首に腕を回し、抱きついた。
 「は、離れろ!まったく・・・何なんだ!」
 「フンだ!いい気味」
 捨て台詞を吐いて、百花は山に入っていった。
 しばらくして足を止めて後ろを振り向くと、瑠宇斗の姿は勿論無い。
< 43 / 192 >

この作品をシェア

pagetop