あやかし銀狼に恋をして〜じれ恋はやがて溺愛に包まれる
 20年ほど前、東京で製造業の会社役員をしていた祖父は、忙しい毎日で家を任せっきりだった登喜代と、2人でゆっくり過ごしたいと出雲へ旅行に行った帰り道、急な天候不良で電車が止まり、この町に立ち寄った。
 その時、 登喜代が「この土地に住みたい!」と言うと、敦実達に相談することなく、祖父は早期退職して、癒怒町へ登喜代と移住したのだった。
 瑞穂が小さい頃は、年に1回瑞穂の家に遊びに来ていた2人だが、祖父が2年前に亡くなると、登喜代は「テレビ通話すればいいわね」と、来なくなり、それ以来、登喜代とは敦美との会話中、横から割り込んで会話をするだけだった。
 カナダに行く話をした時に、
 「あらっ、そうなのね。じゃあ、その前に親離れのために、少しうちに来たらどうかしら?」
 その言葉がきっかけで、登喜代の家に行くことになった。

 🐺🐺🐺
 「ふぅー・・・今日も宜しくお願いしますね」
 ここに来てから3日目。瑞穂は店の前を掃き掃除したあと、額の汗を拭き、店にお辞儀をする。これが日課になっている。
 木造だった店は大型台風の煽りで傾き、10年前に2階建てのお店兼住宅へ改装した。
 1階は、お店と奥に厨房、そこからドアを開ければ、登喜代が過ごす居間がある。
 2階は、以前は座敷席にしていたが、町の落ち着きと共に人の訪れも平常に戻り、祖父が亡くなったあと、登喜代1人では対応出来ないと、備品置き場になった。そこの部屋に瑞穂は寝泊まりしている。

 店のテーブル席は木目調で揃えられ、端には長椅子があり、休憩場所になっている。
 テーブルには、『ひとこと思い出ノート』を置いている。山道に訪れた旅の人の思い出が詰まるノートは、ときよ屋と共に歴史を詰めて、2階に保管されている。
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