あやかし銀狼に恋をして〜じれ恋はやがて溺愛に包まれる
 「・・・ねぇ、瑞穂ちゃん。先約って・・・もしかして瑠宇斗さん?」
 「う、うん・・・」
 瑠宇斗がもういない入り口を寂しそうな顔をして見つめる瑞穂を見て、信司はため息をついた。
 「やっぱり好きなんだね、瑠宇斗さんのこと・・・そうだよなぁー、大人の男って感じで、男から見ても惚れ惚れするほどイケメンだもんなぁ」
 「・・・言わないでね」
 「言わないけど・・・瑠宇斗さん、絶対モテるから、早く気持ちを伝えた方が・・・」
 本当はそうしたい。でも、来年の春にはいなくなる・・・言ったら瑠宇斗にも迷惑をかけるし、今のように気軽に話が出来なくなりそうで怖い・・・
 「いいの・・・今のままで」
 「花火大会、瑠宇斗さんもあぁ言ってたし、一緒に行こうよ」
 「・・・ごめん、信ちゃん。私やっぱり、一緒に行けない・・・」
 「そう・・・じゃあ、もし気が変わったら連絡して。じゃあ、またね」
 信司は瑞穂の作り笑顔に胸を痛めながらも、今はそっとしておこうと、電話番号のメモだけ残して店を出て行った。
 夕方になり、瑠宇斗と2人で店を片付けていた時、花火大会のことを切り出した。
 「瑠宇斗さん、花火大会ですが・・・」
 「気にするな。実はその日、俺も予定が出来たから一緒に行けなくなったんだ」
 瑠宇斗は、信司と花火大会に出掛けることを気遣わないように伝えた。
 「そ、そうですか・・・」
 「そうだ。さっきキゼラの藤野さんに会ったんだ。新河さんの代わりに大通りの店に商品を納めに来たらしい」
 「えっ、藤野さんが?・・・」
 予定って・・・もしかしてキゼラの藤野さんと・・・そんな思いが瑞穂の頭を過ぎった。
 「あの・・・瑠宇斗さん・・・花」
 「瑠宇斗くーん!ちょっとこっち手伝ってぇ~」
 登喜代が奥から呼ぶ声が、瑞穂の言葉を遮った。
 「直ぐ行きます!瑞穂、何か言った?」
 「いえ、何も・・・」
 「じゃあ、店は頼むよ」
 瑠宇斗はそのまま登喜代のいる所へ手伝いに行った。
 瑞穂は瑠宇斗にそれ以上問うこともなく、また瑠宇斗も瑞穂は信司と行くものだと思い、2人のすれ違いは、結局解消することなく、当日の花火大会を迎えた。
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