あやかし銀狼に恋をして〜じれ恋はやがて溺愛に包まれる
 手の力が限界にきたその瞬間、突風が吹き、一瞬、銀白色の光に包まれた。
 「キャーッ!」
 眩しくて目を瞑ると、ふわりと体が浮きあがり、誰かに抱きかかえられた感覚にゆっくりと目を開けた。
 そこは歩道で、何が起ったか分からないけど、黒のパーカーを着た人に抱きかかえられている。フードで顔が見えず、
 「す、すみません!私、お金は持ってません!本当にすみません!でも、助けてくれてありがとうございます!」
 怖くてただ謝ってこの場を去ろうとして、自分でも何を言っているのか分からなかった。
 「慌てるな、瑞穂。俺だ」
 フードを取ると、優しく微笑む瑠宇斗だった。
 「・・・る、瑠宇斗・・・さん・・・」
 「怖い思いをしたな・・・もう大丈夫だ」
 「あり・・・がとうございます。あの・・・今、光が・・・」
 「それは・・・花火のせいだろう・・・怪我は無いか?痛いところは?」
 「無いです・・・瑠宇斗さんは、どうしてここに?」
 「信司君が瑞穂から花火大会に行かないと断られたって聞いて。でも瑞穂は花火大会に行くと言って出掛けた。だから心配して捜したんだ」
 「・・・やっぱり見たくなっちゃったから」
 「だからって、こんな所に1人で・・・」
 「いつのまにか道に迷ってたみたいで・・・」
 「山は怖いんだ。2度と1人で登るな。いいな?」
 前にも迷っただろ?そう言いかけて、瑠宇斗が助けたことを瑞穂は知らないことなんだと口を噤んだ。
 「はい・・・ごめんなさい」
 「無事で良かったよ・・・さぁ、せっかくだ。一緒に見ようか」
 瑠宇斗1人なら、どんなに暗い場所でも行けるが、流石に瑞穂を連れて行くことは出来ない。
 安全な道を瑞穂の手を引きながら、告想広場に向かってしばらく歩くと、恋人同士や家族ずれが花火を見上げていた。
 「瑠宇斗さん・・・私と一緒で良かったんですか?約束があるって・・・」
 「あれは瑞穂が気を使うといけないと思って、咄嗟についた嘘だ」
 「嘘?本当に?好きな人・・・とかは?」
 「あぁ・・・瑞穂とかのことか?」
 鳴り響く花火の弾ける音の中、突然の告白で、金縛りにあったように固まった。
 「わ、私・・・?」
 「あぁ・・・瑞穂、登喜代さん、そうだ、和子さんもだな」
 やっぱり・・・心の声は出さずに、瑞穂は項垂れた。
< 60 / 192 >

この作品をシェア

pagetop