あやかし銀狼に恋をして〜じれ恋はやがて溺愛に包まれる
【花火大会の裏側には・・・】
 信司は瑞穂にあっさり花火大会の誘いを断られた翌日、父が経営する小さな建築会社で工事を請け負った受注先に書類を渡すため、喜見町を訪れていた。
 「では、これからも宜しくお願いします」
 父に頼まれた書類を渡したあと、外にでると背伸びをして、
 「喜見町、久々だなぁー。小さい頃は湖にもよく来ていたけど・・・そうだ、久々に寄って行くか」
 湖が見える木陰に座り、ボートに乗る恋人同士を見て、
 「はぁ・・・僕の初恋よ、さらばだ」
 と、湖を見ながら瑞穂との幼き想い出を振り返っていた。

 すると、近くで1人の女性を2人の男性が取り囲んでいるのが見えた。
 「ねぇ、お姉さん、地元の人でしょ?俺達、この町に来るの初めてだから、色々教えてよ」
 「スマホがあるんだから、調べれば分かるでしょ?」
 「警戒しないでよ。あのさ、一緒にボート乗ろうよ。俺達といると楽しいのが分かって貰えるから」
 「しつこいっ!」
 「ねぇ、遊ぼうよ!」
 目の前で嫌がる女性にしつこく声を掛けるのを見過ごせず、
 「おい、嫌がってるじゃないか!」
 喧嘩などしたことがない信司だったが、正義感だけは強い。
 「何だよ、お前!この女の彼氏か?」
 「ち、違うけど・・・嫌がってるから止めろって言ってるんだ!」
 「関係ないなら、あっちに行けっ!」
 1人の大男が女性の前に立ちはだかる信司に殴り掛かろうとした。信司は女性を庇うため、殴られる覚悟で男に立ち向かおうとした時、背中のシャツを引っ張られ、後ろによろけ尻餅をついたのと同時に、目の前の男がひっくり返っていた。
 「あらっ、ごめんなさい。もっと強いかと思ってたけど・・・手加減したら良かったわね」
 「な、何だ、この女、舐めやがって!」
 もう1人の男がつっかかって来た時、女性が片手を掴んだ瞬間、クルッと回転して、気がついたら地面に倒れていた。
 「うぅ・・・な、何だ・・・この女・・・」
 「あっ、先に言わなくてごめんなさい。この町で悪さしたら、私が許さないから。それと・・・あなた達、今後この町に出入り禁止。いいわね?次はこれくらいで済まないわよ」
 「・・・くそ・・・」
 「あらっ、私の聞き間違いかしら?もう1度言ってよ、今のセリフ」
< 64 / 192 >

この作品をシェア

pagetop