あやかし銀狼に恋をして〜じれ恋はやがて溺愛に包まれる
 信司には見えなかったが、女性が覗き込むように男達を見ると、急に顔つきが怯えるように強ばり、恐怖におののく余りに震える男達は、
 「わ、分かりました!!もう2度とここには来ません!」
 「ここだけじゃなく、悪さしたらいつでも行くわよ。あなた達のことは覚えたから」
 「わ、分かりました!!」
 2人は慌てて逃げて行った。
 「ありがとう、助けようとしてくれて」
 「いえ、僕は何も・・・イタッ!」
 「あっ、ごめん!私が引っ張った時に倒れちゃったんだね・・・はぁ・・・頭に血が上ると加減が出来なくなっちゃうのよね・・・瑠宇斗に怒られちゃう」
 「瑠宇斗さんを知っているんですか?」
 「えぇ・・・古くからの友人なの。あなた知り合い?」
 「はい、つい最近ですが・・・」
 「そう・・・いい男でしょ?」
 「は、はい・・・」
 「さぁ、これで私は帰るわ。気をつけて帰るのよ」
 「あ、あの、お名前教えてください!」
 「私?私は百花」
 「僕は信司、松宮信司です」
 「信司・・・じゃあね、信司」
 颯爽と歩く百花の後ろ姿を見送る信司は、今まで味わったことが無い、胸のときめきを感じた。
 瑞穂に抱いた感情とはまったく違う。体の中から湧き上がるザワつき・・・これが本当の・・・
 「一目惚れって、本当にあるんだな・・・」
 それから、何度か湖に足を運んだが、百花には会えなかった。

 そして、花火大会の前日。
 その日は、喜見山の山道を歩いていた。
 しばらくすると、花が一面に咲いている場所があり、1人の女性が木にもたれて座っていた。
 「百花さん!」
 「・・・信司?」
 「はい、覚えていてくれましたか?」
 人の姿の時は、人助け以外なるべく人間と関わることを避けていた百花は、人間と話す機会が殆ど無かった。
 山や町を見回る時は、あやかしの姿で対応出来るからだ。
 ただ時々ここに来て権蔵を思い出し、人間をもっと知るために人の姿をして花を見ていた。
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