あやかし銀狼に恋をして〜じれ恋はやがて溺愛に包まれる
 「まぁね」
 「またお会い出来て嬉しいです。いつもここに?」
 「たまたまよ」
 「そうですか・・・あぁ、そうだ!癒怒町で花火大会があるのを知っていますか?」
 「知ってるわ」
 1度、瑠宇斗と一緒に見たいと思って、捜しに行った。その時、岩肌で見ている瑠宇斗が余りに美しく、ドキドキして声を掛けることが出来なかった。
 「僕と一緒に行きませんか?」
 「私と?どうして?」
 「どうしてって・・・あの、一緒に行きたいなぁって思いまして」
 一目惚れしましたっ!と言う勇気はなく、照れ笑いしながら誤魔化した。
 「あなたとは行かない」
 「あっ、そうですよね・・・すみません。他の人と一緒に行かれますよね」
 「誰とも行かない。私、1人で見るのが好きなの」
 「そ、そうでしたか・・・では、少しだけここに一緒にいてもいいですか?」
 「いいけど・・・静かにしててね。私、大切な人のこと考えてるから・・・」
 「・・・そ、そうですか・・・あっ、一緒にいると彼氏さんに勘違いされちゃいますね」
 「彼氏じゃないわよ。昔、私を可愛がってくれていた人・・・もうこの世にいないけどね・・・」
 風が吹き、乱れた髪を手で抑えながら、寂しそうに揺れる花を見つめる百花に目を奪われる。屈強な男達をやっつけるほど強い百花の寂しそうな横顔に弱さを感じ、信司は守ってあげたいという気持ちがわき上がってきた。
 「僕・・・百花さんが好きになりました」
 「えっ?何?」
 「いえ・・・何でもありません。今日はこれで失礼します」
 笑顔で大きく手を振りながら山道を下る信司にふと権蔵を重ねた。
 「変わった人・・・何か変な感じ・・・」
 百花は今まで味わったことの無い、胸のざわめきを感じながら、それが何かも考えることなくその場を去った。
< 66 / 192 >

この作品をシェア

pagetop