あやかし銀狼に恋をして〜じれ恋はやがて溺愛に包まれる
 それはいつも突然の出来事で、いまだにビクッとすることがある。
 「あらっ・・・いらっしゃい。彷徨っているのね。この前の道をずっと上がった所にあるお地蔵様の前まで行きなさい。あなたが行くべき場所を教えて貰えるわ」
 「人にイタズラするのは止めなさいよ。止めないと癒怒山の神様に叱られるわよ」
 登喜代が話し掛け、目線を向ける先には誰もいない。登喜代は世に言う幽霊やあやかしが見える『霊感』があるらしい。
 母の敦実にそのことを話すと、敦実自身にはその力が無いらしく、登喜代の行動は小さい頃から見ていた姿なので慣れていると言っていた。

 「あっ、そうそう。瑞穂ちゃん、今日からバイトの子が来るの」
 「えっ?町に出れば他にもたくさんあるのに、ここに来るの?」
 「山の見回りや道案内の仕事をしててね。バイト代はいらないから、ここでスタッフとして働きながら、その仕事もさせて欲しいって。それでねぇ・・・27歳のイケメンなのよ!」
 「お、男の人?」
 「そうなの!話し方も優しくて、微笑むとキュンッとしたの!これが一目惚れっていうやつかしら・・・お父さんごめんね」
 と、恋する乙女の顔で、天に向かって手を合わせていた。
 「27歳のイケメンって、なんてざっくりなのよ!」
 「私の目に狂いはないから大丈夫よ!さぁ、私もまだまだ頑張らないと!」
 ウキウキしながら、奥に入って行く登喜代に、瑞穂が口出す余地なんてない。
 『何処の誰なの?』『このご時世、騙されてない?』とか色んな事を言いたいけど・・・
 自分は1か月しかいないし、登喜代が決めたなら仕方ないと、入り口のドアの拭き掃除をしようと表に出た。
 すると、黒髪で毛先が遊び、襟足が少し長めのフワッとしたウルフヘア、そして二重瞼で切れ長の目に長いまつげが妖艶で、鼻筋が通った顔立ちと透けるような肌の白さに、手足も長い男の人が立っていた。
もしかして・・・
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