あやかし銀狼に恋をして〜じれ恋はやがて溺愛に包まれる
 2人は再会を約束し、その場で別れたあと、瑞穂が部屋に戻ろうとした時、
 「あれっ?瑞穂ちゃんじゃない?」
 と、声を掛けてきたのは、信司だった。
 「えっ!信ちゃん?どうしたの?」
 「実は、取引先の人と商談があって、その人が急に帰らないといけなくなってさ。キャンセル料払うくらいならって、僕が代わりに泊まることになったんだ。丁度、喜見町には用事があったし。瑞穂ちゃんは?」
 「私達は花火大会の抽選で1等が当たったの」
 「私達って、登喜代さんと?」
 「ううん、登喜ばぁはお店を休めないからって、瑠宇斗さんと」
 「へぇー、とうとう2人はそんな仲に・・・」
 「ち、違うよ!部屋は別々!」
 「ははっ!そんな焦らなくても。じゃあ、僕は山に出掛けるから、またね!瑠宇斗さんにも宜しく!」
 「う、うん・・・」
 ウキウキしながら出掛ける信司を見送って部屋に戻ると、瑠宇斗が部屋の前で待っていた。
 「る、瑠宇斗さん・・・戻ってたんですね」
 「あぁ、さっきね。急にすまなかった」
 人々を守るのが使命。何よりも優先しなければならない。それを瑞穂に伝えることが出来ず、瑠宇斗はただ謝るしかなかった。
 「・・・大丈夫です」
 2人の時間よりも百花さんとの時間を優先して、何処に行ってたの?瑞穂はその質問をして、理由を知るのが怖かった。
 「瑞穂、まだ時間はあるよ。さぁ、湖に行こうか」
 瑠宇斗が誘ってくれるなら・・・半年後に会えなくなるなら、思い出を作りたい。
 「・・・はい」
 2人は改めて、湖に行き、ボート乗り場に向かった。
 「あの、2人お願いします」
 「あーっ、すみません、お客さん。今日は早めに営業終了にしたんですよ」
 「そうでしたか・・・分かりました」
 結局、2人はボートに乗ることが出来ず、ホテルに帰る前に、湖が一面に見渡せる場所で立ち止まった。
 「瑞穂、本当にすまない」
 「いえ、こうやって瑠宇斗さんと2人で湖を見るだけでも幸せです・・・」
 百花との関係、そしていずれ瑠宇斗は自分のそばからいなくなる・・・そう思うと勝手に涙が零れ落ちた。
 「瑞穂が楽しみにしていたのに・・・約束を破ってしまって・・・」
 「こ、この涙は・・・ほらっ、こんな素敵な景色、あまりにも綺麗で感動しちゃって・・・」
 涙が零れ落ちながら笑顔を振りまく瑞穂を見て、瑠宇斗は抱きしめたいという衝動を必死で抑えた。

 今までに何度も抱擁したのに、今の感情は全く別のもの・・・こんな感情、知らなければ良かった・・・
 瑠宇斗込み上げて来たものが表に出してはいけない感情だと、心の奥に閉じ込めた。
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