あやかし銀狼に恋をして〜じれ恋はやがて溺愛に包まれる
 「こんにちは、新河さん」
 「瑠宇斗さん、近くの宿に納品に来たのでお邪魔しました。ここに来るのも久々だなぁ・・・近くなのになかなか足を運ぶ機会も無くて・・・」
 「忙しいのと色々あったから仕方ないですよ」
 「もう、自分では心の整理がついたと思っていたのですが・・・やはり、時々思いだして海に行くんです」
 「そうですか・・・忘れる必要は無いですよ。ただ、自分を責めなければ」
 「はい、それは佳美のためにもしないようにしています」
 新河の口から女性の名前を聞いて、裕実の笑顔が消えた。
 「藤野さんが待っているので、そろそろ店に戻ります」
 今度は藤野の名前を聞いて、瑞穂の笑顔が消えた。
 「またお店に行きますよ」
 「お待ちしてます。じゃあ、瑞穂さん、富間さん、またお店にも来て下さい」
 「は、はい」
 「はい・・・また・・・」
 2人は顔が引きつりながら、新河を見送った。

 2人の作り笑顔に瑠宇斗が不思議に思い、
 「2人とも様子がおかしいけど・・・」
 瑞穂は藤野の『仲間』という言葉が脳裏に過って、胸がギュッと締め付けられたことは言えず、もう一つの気になったことを確認した。
 「瑠宇斗さん、さっき言ってた『佳美さん』っていう方はどなたなんですか?新河さんは呼び捨てだったので、親しい女性だと思ったのですが・・・」
 「あぁ、新河さんの昔の恋人だよ」
 「昔の・・・恋人・・・ですか?」
 「佳美さんは新河さんに別れを告げた後、しばらくして病気で亡くなったんだ。支える事が出来ず、辛い思いをさせたと思い詰めていてね。でも、佳美さんは新河さんの幸せを望んでいることを伝えたら、前向きになったんだが・・・やはり、そう簡単には心から前に進むことが難しいんだと思う」
 その話を聞いて、裕実は涙を零した。
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