彼は意地悪なボイスアクター(仮)
しばらくするとガヤガヤとにぎやかな声がし始めた。
ちらっと見ると一気に紗枝の顔が熱くなる。
大勢の人たちに囲まれて1人の男性がすぐに紗枝の目の中に入ってきた。
及川良太(38)は紗枝の最近できた恋人だ。
そして紗枝にとって初めて出来た恋人である。
最近の紗枝は寝ても覚めてもほぼ彼のことで頭がいっぱいだった。
すぐに一昨日の夜のことが思い出され、紗枝は胸がいっぱいになり食欲が抑えられてしまうほどだった。
紗枝の小さなワンルームの部屋で愛し合ったあと、及川はすぐに紗枝に背を向けて寝てしまった。
「俺、右向きじゃないと寝れないんだ」
及川はそう言っていたけど紗枝が反対側にいた時はやはり反対を向いていた。
それでも紗枝が背中にしがみつき腕を回すと紗枝の腕を及川が撫でてくれた。
「愛してます」
そんな言葉を気が付いたら発していた。
及川から返事はなかったけれど紗枝はそれでもいいと思っていた。
紗枝は及川のほんの一部しかまだ知らないのに彼が運命の相手で、これから先、彼のような人には出会えないだろうと本気で信じていた。
本物の愛なんか知らないくせに「愛してる」と何度も囁けた。
及川の手が止まると彼の寝てしまった合図だった。
紗枝は眠かったけど彼のぬくもりを感じていたくて頑張って起きていた。
及川の背中に頬をつけるだけで幸せだったのである。
及川は毎日、忙しい日々を送っているらしく会えるのは深夜だけだった。
0時すぎに彼はやってきて早朝に出て行く。
朝食を用意しても食べていくことはなかった。
友人に彼のことを話すと『逆シンデレラマン』とあだ名をつけられた。
思わずふっと笑みがこぼれたところで紗枝は我に返った。
ここが会社で、しかも食堂で人の目があることを忘れていた。
食券を食堂スタッフに渡している及川を見ていると目が合った。
紗枝はそれだけでドキドキした。
及川は笑顔を向けて小さく手をあげる。
紗枝はそれだけで先ほどの飯塚のことなど、どうでもよくなるほど1日が幸せになった。
紗枝は会釈で及川に応えた。
及川と紗枝が付き合っていることは社内で内緒だったので手を振りたかったけれど我慢した。
紗枝は及川の受け持っている番組の1つのADだったので及川が手を振るのは普通だが紗枝が手を振り返すのは普通ではなかったから。
だから会釈してあくまでも部下が上司に対して挨拶している風なのを示すことにしたのだ。
それでも2人が怪しい関係であるのではないかと疑う人はいた。
それに気が付いていないのは2人だけだった。
その証拠に近くに座っていた女性2人組が紗枝を見ながらヒソヒソと何かを話している。
「プロデューサーさんの奢りなんて嬉しいです!1度でいいからテレビ局で食事したかったんですよ」
紗枝も知っている若手お笑い芸人の田沼明人(25)が及川にそう声をかけて及川の視線が紗枝から離れた。
及川はそのまま食堂にある螺旋階段をその芸人と一緒に話しながら上がって行く。
その先には週間視聴率トップを取った番組の関係者だけが入ることが出来る特別な個室の食堂がある。
及川が担当プロデューサーを務めている番組の1つが先週の視聴率1位と獲得した。
それは紗枝が入っている番組ではなかったのが少し悔しくも感じられたけど恋人が1位というのは自分のことのように嬉しいものなのだと知った。
及川の後ろをゾロゾロとスタッフが追って上がっていった。
紗枝はそのスタッフたちの中にやたら目立つ人物を見つけた。
それは紗枝が那原を見た最初だった。
とても背が高く色白で美しい顔をしていた。
那原はさわやかな笑顔を向けてスタッフと話していた。
周りのスタッフの対応から俳優なのだろうと思った。
しかし見た記憶がないので、おそらく売り出し中の若手俳優だと紗枝は判断した。
あまりにも見過ぎたようで紗枝の視線に気が付いたのか那原と視線が合った。
視線が絡み合った瞬間、心臓が大きく鳴った。
なんで、そんな風になったのかは不思議だった。
あまり見ていてはいけないとすぐに紗枝の脳が判断して視線を外して慌ててオレンジジュースを飲んだ。
最後に飲もうと取っておいた大好きなオレンジシューズを紗枝は飲み干してしまった。
次に見た時には既にその人は特別食堂に入ったあとで残りのスタッフが上っているだけだった。
自分もイケメンに見とれてしまうものなのだと新しい自分の事を知った気がした。
紗枝は特別食堂を見上げていた。
ちらっと見ると一気に紗枝の顔が熱くなる。
大勢の人たちに囲まれて1人の男性がすぐに紗枝の目の中に入ってきた。
及川良太(38)は紗枝の最近できた恋人だ。
そして紗枝にとって初めて出来た恋人である。
最近の紗枝は寝ても覚めてもほぼ彼のことで頭がいっぱいだった。
すぐに一昨日の夜のことが思い出され、紗枝は胸がいっぱいになり食欲が抑えられてしまうほどだった。
紗枝の小さなワンルームの部屋で愛し合ったあと、及川はすぐに紗枝に背を向けて寝てしまった。
「俺、右向きじゃないと寝れないんだ」
及川はそう言っていたけど紗枝が反対側にいた時はやはり反対を向いていた。
それでも紗枝が背中にしがみつき腕を回すと紗枝の腕を及川が撫でてくれた。
「愛してます」
そんな言葉を気が付いたら発していた。
及川から返事はなかったけれど紗枝はそれでもいいと思っていた。
紗枝は及川のほんの一部しかまだ知らないのに彼が運命の相手で、これから先、彼のような人には出会えないだろうと本気で信じていた。
本物の愛なんか知らないくせに「愛してる」と何度も囁けた。
及川の手が止まると彼の寝てしまった合図だった。
紗枝は眠かったけど彼のぬくもりを感じていたくて頑張って起きていた。
及川の背中に頬をつけるだけで幸せだったのである。
及川は毎日、忙しい日々を送っているらしく会えるのは深夜だけだった。
0時すぎに彼はやってきて早朝に出て行く。
朝食を用意しても食べていくことはなかった。
友人に彼のことを話すと『逆シンデレラマン』とあだ名をつけられた。
思わずふっと笑みがこぼれたところで紗枝は我に返った。
ここが会社で、しかも食堂で人の目があることを忘れていた。
食券を食堂スタッフに渡している及川を見ていると目が合った。
紗枝はそれだけでドキドキした。
及川は笑顔を向けて小さく手をあげる。
紗枝はそれだけで先ほどの飯塚のことなど、どうでもよくなるほど1日が幸せになった。
紗枝は会釈で及川に応えた。
及川と紗枝が付き合っていることは社内で内緒だったので手を振りたかったけれど我慢した。
紗枝は及川の受け持っている番組の1つのADだったので及川が手を振るのは普通だが紗枝が手を振り返すのは普通ではなかったから。
だから会釈してあくまでも部下が上司に対して挨拶している風なのを示すことにしたのだ。
それでも2人が怪しい関係であるのではないかと疑う人はいた。
それに気が付いていないのは2人だけだった。
その証拠に近くに座っていた女性2人組が紗枝を見ながらヒソヒソと何かを話している。
「プロデューサーさんの奢りなんて嬉しいです!1度でいいからテレビ局で食事したかったんですよ」
紗枝も知っている若手お笑い芸人の田沼明人(25)が及川にそう声をかけて及川の視線が紗枝から離れた。
及川はそのまま食堂にある螺旋階段をその芸人と一緒に話しながら上がって行く。
その先には週間視聴率トップを取った番組の関係者だけが入ることが出来る特別な個室の食堂がある。
及川が担当プロデューサーを務めている番組の1つが先週の視聴率1位と獲得した。
それは紗枝が入っている番組ではなかったのが少し悔しくも感じられたけど恋人が1位というのは自分のことのように嬉しいものなのだと知った。
及川の後ろをゾロゾロとスタッフが追って上がっていった。
紗枝はそのスタッフたちの中にやたら目立つ人物を見つけた。
それは紗枝が那原を見た最初だった。
とても背が高く色白で美しい顔をしていた。
那原はさわやかな笑顔を向けてスタッフと話していた。
周りのスタッフの対応から俳優なのだろうと思った。
しかし見た記憶がないので、おそらく売り出し中の若手俳優だと紗枝は判断した。
あまりにも見過ぎたようで紗枝の視線に気が付いたのか那原と視線が合った。
視線が絡み合った瞬間、心臓が大きく鳴った。
なんで、そんな風になったのかは不思議だった。
あまり見ていてはいけないとすぐに紗枝の脳が判断して視線を外して慌ててオレンジジュースを飲んだ。
最後に飲もうと取っておいた大好きなオレンジシューズを紗枝は飲み干してしまった。
次に見た時には既にその人は特別食堂に入ったあとで残りのスタッフが上っているだけだった。
自分もイケメンに見とれてしまうものなのだと新しい自分の事を知った気がした。
紗枝は特別食堂を見上げていた。