亡者逃走中in現世
第二章、入学早々目立っちゃってます

学校生活

「キャー、楓くん頑張って〜!」

「きゃあぁぁ!今のシュート見た!?ヤバくない!?」

体育の時間。黄色い歓声が響き渡るグラウンド。

今、目の前では男子のサッカーが行われているんだけど、変成くんはどのチームよりも目立って輝いていた。

さっきから一人だけ次元の違うスピードで見事なパス回しを披露し、面白いようにシュートを決めていた。それを見た女子達は文字通り大興奮。

なんでも噂によると、入学してまだ数週間しか経っていないのに、既に非公式のファンクラブまで設立されているんだとか。

現世の女子中学生の行動力、恐るべし。

「あらまぁ、すごい人気だと。真宵の幼馴染くん」

コートの隅で一緒に見学していた菅原(すがわら)美穂(みほ)ちゃんが、感心したように呟く。

彼女は、入学して初めてできた友達なんだ。席が前後というだけあって、すぐに仲良くなったんだ。

美穂ちゃんは一房だけ赤いリボンを付けているボブがよく似合う可愛い女の子。

裏表のない性格の美穂ちゃんは私にとって頼れる姉のような存在であり、お互いに悩みを相談し合える唯一の友達。

「真宵ってさ、楓くんと幼馴染なんでしょ?」

美穂ちゃんが、グラウンドを軽快に駆け抜けていく変成くんを目で追いながら、小声で内緒話をするように聞いてきた。

「う、うん。小さい頃からずっと一緒で……」

「へぇ〜良いなぁ。あんなイケメンで運動神経も良くて、優しい幼馴染とか、少女漫画じゃん」

「そ、そんなことないよ!?楓くん、優しいどころか怖い時もあるし……腹黒サイコパスだよ」

「あははっ、仲良しなんだね!」

​美穂ちゃんは、私の必死の告発をただの『幼馴染の照れ隠し』と受け取ったらしく、楽しそうに笑って私の肩をポンと軽く叩いた。

「楓くんはやっぱり真宵の可愛さにやられたか」

「まさか!」

「いや〜有り得るかもよ?だって、中学生って小さい時みたいに好きな子のいじわるしちゃう年頃じゃん?それに、真宵って女の私から見ても可愛いし」

「え、ありがとう」

そんな風にあれこれ考えていたら、ふと何処かから大声が上がって―――

「そこ、危ないっ!」

次の瞬間、勢いよくサッカーボールがこちらに向かってくるのが見えた。

「え!?」

咄嗟のことに脳の処理が追いつかず、短い悲鳴のような声を上げるのが精一杯だった。

すると、どこからか変成くんが走ってきて私を庇うようにギュッと抱きしめる。

―――ドンッ!

飛んできたボールは勢いよく彼に当たったので、ヒヤッとしてしまった。

「キャー、楓くん!!」

それを見た女子達も大騒ぎ。

「真宵、大丈夫?」

だけど私はそれ以上に、変成くんの方が心配だった。

「楓くんも大丈夫?」

「大丈夫だけど」

胡散臭い笑みで笑う彼はどうやら平気みたいだけど……申し訳ない。

だって、絶対痛かったよね?今の。

すると、その様子を見ていた女子達が口々に騒ぎ出す。

「良いな〜白崎さん」

「羨ましい、私にもボールが当たれば良かったのに」

「はぁ、私も楓くんに守ってもらいたーい!」

さらには隣にいた美穂ちゃんも何故かニヤニヤしていて。

一気にみんなから注目される羽目(はめ)になってしまったので、なんだかちょっと恥ずかしかった。
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