愛に目覚めた冷徹孤高の心臓外科医は、政略結婚妻を離さない ――旦那様、この結婚は契約ですよね?
 翌日は、昨日の曇り空が嘘のようにからっと晴れていた。昨夜の激しい雨はすっかり止み、気持ちのよい青空が広がっている。

 荘厳な雰囲気の中、身内のみで行われる結婚式。大きなステンドグラスから降り注ぐ色とりどりの光が、私のウェディングドレスを鮮やかに染めている。

 新婦側の席には、父とは母が厳格な顔をしてそこに座っている。だが、ちらりと見た新郎側の席は、たったひとり年配の男性が座っているだけだ。

 彼は、望田製薬の社長――瑞樹さんのお父様だ。顔と名前は存じているが、式前の挨拶に来られなかったから、挨拶できずじまいでいる。

 やがて式は進行し、牧師が私たちに誓いの言葉を求めた。

「健やかなるときも、病めるときも彼を愛し、敬い、生涯にわたってともに生きることを誓いますか?」

「誓います」

 式の進行上そう返答したが、なんて滑稽な誓いなのだろうと思った。

 愛なんてこの世界に存在しない。どんなに盛り上がってもそれは一時の感情にすぎない。にもかかわらず、こうして誓わなければならないなんて。

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