愛に目覚めた冷徹孤高の心臓外科医は、政略結婚妻を離さない ――旦那様、この結婚は契約ですよね?
「でもこれ、AI生成ですよ?」

「構わないわ、本当に見えるならそれでいいの!」

 沙久良さんは椿芽さんの手から、なにか紙のようなものをひったくった。

 ……AI生成?
 不穏な単語に胸が騒ぎ、立ち尽くしたままふたりのやりとりをじっと見てしまう。

「翼さんの独壇場になるはずだったのに、手術を邪魔された。あの人まで持ち上げられるなんて、たまったもんじゃないわ。このパーティーで、思い知らせてやるのよ」

 沙久良さんの執念深い言葉に、背筋が凍った。いったい、彼女はパーティーでなにをしようというのか。

 だが、怖気づいていてはいけない。なにか問題が起こると知ったなら、止めなければならない。それが、瑞樹さんの妻としての務めだ。

 勇気を出して、一歩踏み出す。

 するとその瞬間、背後から伸びてきた腕に、体がぐっと引き寄せられた。首元になにかが触れ、ひゅと息をのむ。

 悲鳴を上げる間もなく、ハンカチのようなもので口元を塞がれた。薬品の匂いがして、体に力が入らなくなる。
 私はそのまま、意識を失った。

< 136 / 173 >

この作品をシェア

pagetop