愛に目覚めた冷徹孤高の心臓外科医は、政略結婚妻を離さない ――旦那様、この結婚は契約ですよね?
 つい顔を陰らせてしまうと、瑞樹さんは私に回す腕の力をわずかに強めた。

 「そんなに不安そうな顔をするな。俺はいつまでも、万智を愛している」

 その声に振り向くと、彼の唇が私の唇と優しく重なった。

「一生をかけて、俺は万智を愛し続けるよ」

 どうやら彼は、私の不安などお見通しだったようだ。

「瑞樹さん……」

 彼の気持ちが嬉しいのは、彼に恋しているからだ。彼を愛しているからだ。

「愛はちゃんとここにあるんだって、わからせてやる」

 じっと目を見つめて伝えられた言葉に、たまらなく幸せになる。
 きっと私は、この愛に溺れていていいのだ。それが、彼からの愛を信じるということだから。

「私、幸せです。最高にかっこいいお医者さんで、自慢の夫である瑞樹さんに、こんなに愛されて」

 瑞樹さんを信じようと言葉にしたが、なんだか照れくさい。つい俯いてしまうと、瑞樹さんはほう、と優しい吐息をもらした。
 それから、私の耳を軽く食む。つい体を震わせ、彼を見上げた。

「のんびりした旅にしようと思っていたが……俺は今、万智を離したくなくなってしまった」

 その言葉に、胸がまた大きく跳ねてしまう。

 だけど、私だって同じだ。
 彼が愛しいてると、好きだと口にしてくれるたび、彼に触れたくて仕方なくなる。彼の体温を感じて、溶かされてしまいたくなる。
 きっとこれが、私たちの〝愛〟を確かめ合う方法なのだろう。

「私もです」

 小さな声でつぶやいただけなのに、瑞樹さんは急くように唇に口づけてきた。そのまま彼の舌に口内を翻弄され、私から力が抜けてしまう。

< 171 / 173 >

この作品をシェア

pagetop