愛に目覚めた冷徹孤高の心臓外科医は、政略結婚妻を離さない ――旦那様、この結婚は契約ですよね?
「遅れちゃってごめんね、望田先生。この度は結婚おめでとう。この間のバイパス手術もすばらしかったし、望田先生はまさに〝時の人〟だね」
副院長の声色は柔らかい。だけど、私は聞き逃さなかった。彼の言葉の中に、棘があることを。
それでも彼が笑みを浮かべているのは、次期院長になるのが自分だと確信しているからだろう。順当にいけば、副院長というポストについている彼が院長になるのは当然のことだ。
「ありがとうございます、副院長。お褒めいただき、光栄です」
瑞樹さんは顔色ひとつ変えずに淡々とそう言い、頭を下げた。
「腕〝だけ〟は、一流だもんなあ、望田先生は」
副院長は冗談を言うかのように笑う。だがそれは、瑞樹さんを嘲笑するようにも聞こえた。
思わず瑞樹さんを見上げたが、彼の表情はぴくりとも動かない。
副院長は一度咳払いをして、けれど笑みを浮かべたまま続けた。
「でも、院長は〝技術〟だけでは務まらないよ。それは、現院長を見ていればわかるだろう? 望田先生には、少し難しいことかもしれないけれど」
彼の笑みに不快感を覚えたが、瑞樹さんは私をエスコートし続けたまま副院長を見ているだけで、動じる様子もない。副院長の言葉の中に『愛想も必要だ』ということが含まれているのを、彼もわかっているだろうに。
副院長の声色は柔らかい。だけど、私は聞き逃さなかった。彼の言葉の中に、棘があることを。
それでも彼が笑みを浮かべているのは、次期院長になるのが自分だと確信しているからだろう。順当にいけば、副院長というポストについている彼が院長になるのは当然のことだ。
「ありがとうございます、副院長。お褒めいただき、光栄です」
瑞樹さんは顔色ひとつ変えずに淡々とそう言い、頭を下げた。
「腕〝だけ〟は、一流だもんなあ、望田先生は」
副院長は冗談を言うかのように笑う。だがそれは、瑞樹さんを嘲笑するようにも聞こえた。
思わず瑞樹さんを見上げたが、彼の表情はぴくりとも動かない。
副院長は一度咳払いをして、けれど笑みを浮かべたまま続けた。
「でも、院長は〝技術〟だけでは務まらないよ。それは、現院長を見ていればわかるだろう? 望田先生には、少し難しいことかもしれないけれど」
彼の笑みに不快感を覚えたが、瑞樹さんは私をエスコートし続けたまま副院長を見ているだけで、動じる様子もない。副院長の言葉の中に『愛想も必要だ』ということが含まれているのを、彼もわかっているだろうに。