愛に目覚めた冷徹孤高の心臓外科医は、政略結婚妻を離さない ――旦那様、この結婚は契約ですよね?
「主に月に一回、情報交換の会合を行っているんだけれど、その他にもチャリティーバザーをしたり、病院のお花を管理したりしているわ。ボランティア活動だけれど、病院のため、夫のために、あなたも入らない?」
優しい勧誘のような言葉だが、彼女が向ける視線は私に「入らないわけないわよね?」と語りかけてくるようだ。もしここで拒否したら、彼の次期院長の座が危ぶまれるかもしれない。
「もちろんです、入会させてください」
沙久良さんの顔を見上げてそう言うと、彼女は名刺のコードを読み込めば自分の連絡先に繋がると教えてくれた。
「初回の集まりは、連絡するわね」
「ありがとうございます」
鴎川夫妻は私の答えをのみ込むようにして、背後の人たちと談笑を始めてしまう。
私は手にしたままの名刺に、もう一度視線を落とした。彼女と同じ、花の香りが立ちのぼる。甘美だがこの場にそぐわないような気がしてならないこの香りは、イランイランだろうか。
名刺をじっと見つめ顔をしかめてしまいそうになった時、私の腰を支えていた瑞樹さんの腕から、ふっと力が抜けた。それで、はっとする。
「瑞樹さん、少し外しますね。この名刺、クロークに預けてきます」
鞄もない今、これを持ち歩くわけにもいかない。私は頷いた瑞樹さんに一礼し、クロークへ向かった。
優しい勧誘のような言葉だが、彼女が向ける視線は私に「入らないわけないわよね?」と語りかけてくるようだ。もしここで拒否したら、彼の次期院長の座が危ぶまれるかもしれない。
「もちろんです、入会させてください」
沙久良さんの顔を見上げてそう言うと、彼女は名刺のコードを読み込めば自分の連絡先に繋がると教えてくれた。
「初回の集まりは、連絡するわね」
「ありがとうございます」
鴎川夫妻は私の答えをのみ込むようにして、背後の人たちと談笑を始めてしまう。
私は手にしたままの名刺に、もう一度視線を落とした。彼女と同じ、花の香りが立ちのぼる。甘美だがこの場にそぐわないような気がしてならないこの香りは、イランイランだろうか。
名刺をじっと見つめ顔をしかめてしまいそうになった時、私の腰を支えていた瑞樹さんの腕から、ふっと力が抜けた。それで、はっとする。
「瑞樹さん、少し外しますね。この名刺、クロークに預けてきます」
鞄もない今、これを持ち歩くわけにもいかない。私は頷いた瑞樹さんに一礼し、クロークへ向かった。