愛に目覚めた冷徹孤高の心臓外科医は、政略結婚妻を離さない ――旦那様、この結婚は契約ですよね?
「そのお召し物では汚れてしまうのではないかって、みな心配しているのよ」

 悦に入ったように細められた目に、ああ、そういうことかと納得した。
 これはお庭でお茶を楽しむ〝ガーデン〟パーティーではなく、〝ガーデニング〟を楽しむパーティー。おそらく、私が勘違いするようにわざとガーデンパーティーだと知らせ、間違った服装を選ぶように仕向けたのだろう。

 だが、仕方ない。次期院長の座を、彼女の旦那の副院長と瑞樹さんが競い合っている。沙久良さんにとって、私はライバルのようなものなのだ。

「すみません、気の利いた格好ができていなくて」

 嫌がらせに動じる必要はない。だが、角を立てるのも良くない。
 そう思って選んだ言葉を口にすると、沙久良さんはふっと私を小馬鹿にしたような吐息をこぼした。

「万智さんは理事長の娘さんだもの。きっとそれが、あなたの〝作業着〟なのよね?」

 これ以上なにかを告げても無駄だ。そう思い、私はただ笑顔でこくりと頷いた。

「じゃあ、始めましょうか」

 沙久良さんはそう言うと、近くに控えていたメイドに視線で合図した。彼女に案内され、庭の中央に並べて置かれたガーデンテーブルの前へ。そこには、いくつかのプランターが置かれていた。

「万智さんは初めてだから、私の隣がいいわよね?」

 圧のある笑みを向けられ、「いいえ」と言えるわけがない。

「お願いします」

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