愛に目覚めた冷徹孤高の心臓外科医は、政略結婚妻を離さない ――旦那様、この結婚は契約ですよね?
「まあ、万智さんはそんなことまでご自分でなさるのね。流石だわ」
沙久良さんの言葉からは明らかな蔑みを感じたが、私は彼女に笑みを向けた。
「自分で植えたお花が病院を彩るのなら、それほど嬉しいことはありませんから」
すると、沙久良さんの口角の皺がいっそう深まる。同時に、腿のあたりが急に冷たくなった。慌ててそちらを見ると、彼女の手に握られたじょうろの先がこちらを向いていた。
「ごめんあそばせ。手が滑ってしまったわ」
「いえ」
私は湧きあがりそうな苛立ちを抑え、淡々と濡れたスカートの裾を持ち上げ搾った。しばらくすれば乾くだろうし、こんなことでいちいち気持ちを乱されてはいけない。
水をやり終えると、種を植えつけたプランターをメイドたちとともに庭の隅に運んだ。そういうものだと思って一緒に運んだが、私以外はひとりもプランターを運ばずに、どこかへ行ってしまう。
私はプランターを庭の隅に置くと、ため息をこぼした。
でもまあ、こんなものなのだろう。いちいち気に病んでいたら、体が持たなくなってしまう。
私はかつて母に言われた言葉を思い出し、つぶやいた。
「結婚というのは、互いの利のために生きること。相手に尽くすのは、それが自分に与えられた仕事だから」
シャツについてしまった土汚れは、軽くこすって目立たないようにする。それから、手をぱんぱんと叩くと、私は立ちあがり隣にいたメイドに笑顔で尋ねた。
「有明会のみな様は、どちらへ向かわれたのでしょうか?」
沙久良さんの言葉からは明らかな蔑みを感じたが、私は彼女に笑みを向けた。
「自分で植えたお花が病院を彩るのなら、それほど嬉しいことはありませんから」
すると、沙久良さんの口角の皺がいっそう深まる。同時に、腿のあたりが急に冷たくなった。慌ててそちらを見ると、彼女の手に握られたじょうろの先がこちらを向いていた。
「ごめんあそばせ。手が滑ってしまったわ」
「いえ」
私は湧きあがりそうな苛立ちを抑え、淡々と濡れたスカートの裾を持ち上げ搾った。しばらくすれば乾くだろうし、こんなことでいちいち気持ちを乱されてはいけない。
水をやり終えると、種を植えつけたプランターをメイドたちとともに庭の隅に運んだ。そういうものだと思って一緒に運んだが、私以外はひとりもプランターを運ばずに、どこかへ行ってしまう。
私はプランターを庭の隅に置くと、ため息をこぼした。
でもまあ、こんなものなのだろう。いちいち気に病んでいたら、体が持たなくなってしまう。
私はかつて母に言われた言葉を思い出し、つぶやいた。
「結婚というのは、互いの利のために生きること。相手に尽くすのは、それが自分に与えられた仕事だから」
シャツについてしまった土汚れは、軽くこすって目立たないようにする。それから、手をぱんぱんと叩くと、私は立ちあがり隣にいたメイドに笑顔で尋ねた。
「有明会のみな様は、どちらへ向かわれたのでしょうか?」