愛に目覚めた冷徹孤高の心臓外科医は、政略結婚妻を離さない ――旦那様、この結婚は契約ですよね?
みなは中庭にいるとメイドに教えられ、屋敷の中を案内される。しかしその途中の廊下で、私は小さな紙きれを拾った。光前寺総合病院宛の、領収書だ。
なぜ、こんなものがここに? 不思議に思いながら、メイドに差し出す。
「あの、これが落ちておりました」
するとメイドは目を見開き、私からそれを奪うように取る。
「望田様、中庭はこの先です」
彼女はそれだけ言うと、焦ったように一礼して邸の奥へ行ってしまう。私はぽかんとしつつも、彼女に言われた通りに真っ直ぐにそこを通り抜けた。
正面の扉を開くと、沙久良さんたちの話し声が聞こえた。どうやら無事、中庭に来られたようだ。彼女たちの声のほうに向かおうとしたが、私は足を止めてしまった。
「次期院長候補になるために、わざわざ結婚したらしいけれど……みなさんも見たでしょう、あの記者会見。考えてごらんなさい、あんな仏頂面な人が院長としてあの病院の中を練り歩く姿。私のお父様との違いに、みなが恐縮して院内の雰囲気が悪くなるに決まっているわ。腕がいいだけで院長が務まると思っているのが間違いなのよ」
沙久良さんの話は、瑞樹さんのことに違いない。つい、そのまま聞き耳を立ててしまう。
「それに、奥さんの万智さん。あの人、自分の間違いを謝るでもなく、淡々と私に楯突くように行動していたの、あなたたちも見ていたでしょう? 理事長の娘だから、なにしても許されるって調子にのっているのよ」
私にも向けられた棘のある言葉に、ついため息をこぼした。言いたいだけなら言わせておけばいいと思うが、これではそちらに合流しづらい。
その場に立ち止まったままでいると、沙久良さんはさらに続けた。
なぜ、こんなものがここに? 不思議に思いながら、メイドに差し出す。
「あの、これが落ちておりました」
するとメイドは目を見開き、私からそれを奪うように取る。
「望田様、中庭はこの先です」
彼女はそれだけ言うと、焦ったように一礼して邸の奥へ行ってしまう。私はぽかんとしつつも、彼女に言われた通りに真っ直ぐにそこを通り抜けた。
正面の扉を開くと、沙久良さんたちの話し声が聞こえた。どうやら無事、中庭に来られたようだ。彼女たちの声のほうに向かおうとしたが、私は足を止めてしまった。
「次期院長候補になるために、わざわざ結婚したらしいけれど……みなさんも見たでしょう、あの記者会見。考えてごらんなさい、あんな仏頂面な人が院長としてあの病院の中を練り歩く姿。私のお父様との違いに、みなが恐縮して院内の雰囲気が悪くなるに決まっているわ。腕がいいだけで院長が務まると思っているのが間違いなのよ」
沙久良さんの話は、瑞樹さんのことに違いない。つい、そのまま聞き耳を立ててしまう。
「それに、奥さんの万智さん。あの人、自分の間違いを謝るでもなく、淡々と私に楯突くように行動していたの、あなたたちも見ていたでしょう? 理事長の娘だから、なにしても許されるって調子にのっているのよ」
私にも向けられた棘のある言葉に、ついため息をこぼした。言いたいだけなら言わせておけばいいと思うが、これではそちらに合流しづらい。
その場に立ち止まったままでいると、沙久良さんはさらに続けた。