愛に目覚めた冷徹孤高の心臓外科医は、政略結婚妻を離さない ――旦那様、この結婚は契約ですよね?
 瑞樹さんはなぜか手を止め、それをじっと見ている。

「受付の花に、青なんてあったか?」

「いえ、あの……それは、なんとなく瑞樹さんをイメージしてお花を足したら、そうなってしまいました」

 お花を選んでいた時はあまり意識していなかったのだが、出来上がったアレンジメントを見て、なんとなく瑞樹さんらしいと思った。この部屋に置くことを想定してお花を選んだから、無意識に瑞樹さんをイメージしていたのだと思う。

「へえ」

 瑞樹さんはつぶやき、花に顔を近づける。

「……ご迷惑だったでしょうか?」

 余計なことをしてしまったなら申し訳ない。つい肩をすぼめ、彼に問う。すると、瑞樹さんはそれを見つめたまま口を開いた。

「いつものお香の匂いのほうが、俺は好きだ」

 ああ、やってしまった。香りのことまで考えが及ばないなんて。

「申し訳ございません、今すぐ片づけます」

 慌てて料理を並べる手を止め、リビングへ向かう。だが瑞樹さんはこちらを振り向き、私を制した。

「いや、これはこれでいい。俺のイメージなんだろう?」

 私は目をしばたたいた。彼の口元が、なんとなく柔らかく上がった気がしたのだ。
 私はなぜか動揺する鼓動を抑え込むように、意識して声を発する。

「……ありがとうございます。ご飯、すぐに準備しますね」

 すると彼はいつもの顔に戻り、着替えるために書斎に行ってしまう。
 私も急いでダイニングに戻り、鼓動の変化を気にしないようにして残りの食器を食卓に並べた。

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