愛に目覚めた冷徹孤高の心臓外科医は、政略結婚妻を離さない ――旦那様、この結婚は契約ですよね?
「まさか! 今日のこれは、私の準備不足のせいです」

 慌てて答えた。瑞樹さんに、沙久さんとの間のことを悟られて、余計な気苦労をかけるわけにはいかない。
 しかし、彼はフラワーアレンジメントを見つめたまま、険しい顔をする。

「病院のあの枝は? 枯れてしまったのは偶然ではないんじゃないか?」

 まさか、瑞樹さんがドウダンツツジの件を知っていたなんて。驚いたが、あの場所の花の管理を請け負ったのは私だ。
 あの花が枯れてしまった原因はいまだにわからないが、枯らしてしまった責任は私にあると思う。

「私の生け方が悪かったのかもしれません。あの日は朝にお花のメンテナンスに行けなかったので、私の管理不足だと思います」

 そう告げたが、彼はすぐに続ける。

「有明会の会合に初参加すると言っていた日、万智の服には土汚れがついていた。あれは?」

 まさか、そんなところも見られていたなんて。

「それは、ガーデニングをして汚れてしまって」

 言い訳のように言葉を並べながら、自分の至らなさにため息をこぼした。
 こんな人間では、次期院長の妻にふさわしくない。そう思われても、仕方ない。

「ガーデニング?」

 瑞樹さんは、眉間に皺を寄せこちらを向く。

 動揺し、胸がひときわ大きな音を立てた。あの日の会合ではガーデンパーティーをするのだと、瑞樹さんに伝えていたのだ。

 ああ、こんなでは本当にいけない。私は急いで口を開いた。

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