愛に目覚めた冷徹孤高の心臓外科医は、政略結婚妻を離さない ――旦那様、この結婚は契約ですよね?
高校生の時に、友人に言われた言葉がひどく印象に残っている。
『万智はきっとお見合い結婚だもんね。相手を選べないなんて、かわいそう』
誰が誰を好きだとか、ああいうタイプの人と結婚したら幸せだろうとか、いわゆる恋バナをに花を咲かせる友人たちを眺めていた中で不意にかけられた言葉だ。
黙ってしまった私に、友人たちは慌てて言葉を重ねた。
『きっといい人が相手になるよ』
『恋をした人が結婚相手だったら、ロマンチックじゃない?』
私はただ、彼女たちの言葉の意図が掴めずに面食らっていただけなのだが、どうやら気を回させてしまったらしい。
そのことに気づいて、私は『そうだったらいいな』ととりあえずの苦笑を浮かべて相槌を打った。
――だけど、どうして彼女たちが私を『かわいそう』だと同情したのか、いまだに理解できない。
愛なんて、この世界には存在しないフィクションだ。そんな不確かなものを現実に求めるから、人は幻滅し、うまくいかなくなる。
どんなに仲のよいカップルだって、結局破局している。恋愛の末結婚した友人もいるが、口を開けば飛び出てくるのは旦那の愚痴ばかりだ。
愛や恋と名づけられ、素晴らしいものとして扱われるその感情は、いずれ荒ぶり、人を振り回すだけの毒になる。
ならば最初から、結婚に感情など持ち込まないほうがいい。妻はビジネスライクに夫を支える。それが一番合理的で、穏やかな夫婦の形だと私は思う。
その点では、瑞樹さんはとてもよい相手だ。
いつか未来の旦那様のためにとしつけられた家事手伝いなど、教えられたなにもかもが役に立っている。
彼が次期院長に無事なれるよう、彼のために尽くす。それが、光前寺家の娘である私の務めだ。
『万智はきっとお見合い結婚だもんね。相手を選べないなんて、かわいそう』
誰が誰を好きだとか、ああいうタイプの人と結婚したら幸せだろうとか、いわゆる恋バナをに花を咲かせる友人たちを眺めていた中で不意にかけられた言葉だ。
黙ってしまった私に、友人たちは慌てて言葉を重ねた。
『きっといい人が相手になるよ』
『恋をした人が結婚相手だったら、ロマンチックじゃない?』
私はただ、彼女たちの言葉の意図が掴めずに面食らっていただけなのだが、どうやら気を回させてしまったらしい。
そのことに気づいて、私は『そうだったらいいな』ととりあえずの苦笑を浮かべて相槌を打った。
――だけど、どうして彼女たちが私を『かわいそう』だと同情したのか、いまだに理解できない。
愛なんて、この世界には存在しないフィクションだ。そんな不確かなものを現実に求めるから、人は幻滅し、うまくいかなくなる。
どんなに仲のよいカップルだって、結局破局している。恋愛の末結婚した友人もいるが、口を開けば飛び出てくるのは旦那の愚痴ばかりだ。
愛や恋と名づけられ、素晴らしいものとして扱われるその感情は、いずれ荒ぶり、人を振り回すだけの毒になる。
ならば最初から、結婚に感情など持ち込まないほうがいい。妻はビジネスライクに夫を支える。それが一番合理的で、穏やかな夫婦の形だと私は思う。
その点では、瑞樹さんはとてもよい相手だ。
いつか未来の旦那様のためにとしつけられた家事手伝いなど、教えられたなにもかもが役に立っている。
彼が次期院長に無事なれるよう、彼のために尽くす。それが、光前寺家の娘である私の務めだ。