愛に目覚めた冷徹孤高の心臓外科医は、政略結婚妻を離さない ――旦那様、この結婚は契約ですよね?
「すみません、お待たせしてしまって」

 小声で伝えると、彼は「いや」と答えるも、視線を動かさない。

「この絵をモチーフにした、アクセサリーが売っているらしい」

 彼の視線の先を辿ると、絵画の端のほうに、コバルトブルーのイヤリングや指輪、ネックレスが飾ってあった。きっとこの絵画は、人気作なのだろう。

 だが、瑞樹さんはそれ以上なにも言わない。気になって視線をアクセサリーから彼に移すと、彼はこちらを見ていた。
 目が合う。それだけで、今度は胸が跳ねてしまった。

 彼はそんな私の微細な変化を感じ取ったらしい。

「すまない、次に進もうか」

 そう言って、瑞樹さんはさっさと先へ行ってしまった。

 展示室を抜けると、順路はミュージアムショップへと続いていた。画集やポストカードに交じって、アクセサリーやペン、カップなども売っている。先ほど見た、アクセサリーもある。

 それらを一通り見てから、なにかを買うでもなく出口へと向かう。

「これから車で移動するから、先にお手洗いを済ませておくといい。出口のすぐ横にあるから」

 瑞樹さんに促され、出口前のお手洗いへ。手短に済ませて瑞樹さんと合流し、私たちは美術館を後にした。

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