愛に目覚めた冷徹孤高の心臓外科医は、政略結婚妻を離さない ――旦那様、この結婚は契約ですよね?
「今日は甘めの香りだな」
瑞樹さんが話題をお香に変える。それで、やっと緊張が解けた。
「はい。運転でお疲れでしょうから、リラックスしていただけるようにとカモミールを多めに炊きました」
「ありがとう」
彼のお礼の言葉に、また体がぴくりと反応し、心臓の音が速まってしまう。
はっと瑞樹さんを見上げると、彼は先ほどと同じ顔をしていた。
「よかったら、万智もここで過ごしてくれ」
瑞樹さんはソファに座り、いつものようにタブレットを操作し始める。
私はその様子を見届けつつ気持ちを落ち着け、彼の言葉の意味を考えた。
『ここで過ごしてくれ』ということは、ここにいろということだろう。瑞樹さんはタブレットを見ているから、仕事の内容もきちんと把握しろ、ということかもしれない。
私はそっと尋ねた。
「なにを見ていらっしゃるんですか?」
すると彼は顔を上げる。
「この間イギリスで行われた、心臓手術の映像だ。日本ではまだ報告例が少ない症例の、術中動画が届いたから、それを」
そう言う彼は、迷惑そうな顔つきはしていない。それで、きっと間違っていなかったのだと安堵する。
「あの、一緒に見させていただいてもよろしいでしょうか?」
それでも緊張しながら口を開くと、瑞樹さんは目をしばたたく。それでどくりと胸が嫌なふうに震えた。
「構わないが、あんまり楽しいのもではないぞ?」
彼は少しだけ眉間に皺を寄せる。それで、私はやっぱり間違えたのだと悟った。
「心臓外科医の妻として、知りたいと思ったんです。でも、ご迷惑でしたね。すみません」
しかし、瑞樹さんはふっと優しく吐息をこぼした。
「いや、迷惑ではない。こっちに来てくれ」
そう言って、私に隣に座るよう促した。
言われた通りに彼の隣に腰かけ、タブレットを覗く。すると瑞樹さんは丁寧に、私にもわかるように、その手術の内容を教えてくれた。
瑞樹さんが話題をお香に変える。それで、やっと緊張が解けた。
「はい。運転でお疲れでしょうから、リラックスしていただけるようにとカモミールを多めに炊きました」
「ありがとう」
彼のお礼の言葉に、また体がぴくりと反応し、心臓の音が速まってしまう。
はっと瑞樹さんを見上げると、彼は先ほどと同じ顔をしていた。
「よかったら、万智もここで過ごしてくれ」
瑞樹さんはソファに座り、いつものようにタブレットを操作し始める。
私はその様子を見届けつつ気持ちを落ち着け、彼の言葉の意味を考えた。
『ここで過ごしてくれ』ということは、ここにいろということだろう。瑞樹さんはタブレットを見ているから、仕事の内容もきちんと把握しろ、ということかもしれない。
私はそっと尋ねた。
「なにを見ていらっしゃるんですか?」
すると彼は顔を上げる。
「この間イギリスで行われた、心臓手術の映像だ。日本ではまだ報告例が少ない症例の、術中動画が届いたから、それを」
そう言う彼は、迷惑そうな顔つきはしていない。それで、きっと間違っていなかったのだと安堵する。
「あの、一緒に見させていただいてもよろしいでしょうか?」
それでも緊張しながら口を開くと、瑞樹さんは目をしばたたく。それでどくりと胸が嫌なふうに震えた。
「構わないが、あんまり楽しいのもではないぞ?」
彼は少しだけ眉間に皺を寄せる。それで、私はやっぱり間違えたのだと悟った。
「心臓外科医の妻として、知りたいと思ったんです。でも、ご迷惑でしたね。すみません」
しかし、瑞樹さんはふっと優しく吐息をこぼした。
「いや、迷惑ではない。こっちに来てくれ」
そう言って、私に隣に座るよう促した。
言われた通りに彼の隣に腰かけ、タブレットを覗く。すると瑞樹さんは丁寧に、私にもわかるように、その手術の内容を教えてくれた。