ポンコツ御曹司の初恋は…
話し終わったその足で、柏原さんは私たちの方に近づいてきた。
「瀬戸さん、課長には許可を貰ったので、ちょっと役員室まで付いてきて貰えるかな」
なぜ私が役員室に?
隣で薫が興味津々、顔は前を向いてるけど耳をダンボにして、こちらの会話を聞いている。


「私、手が空いてますから一緒にお手伝いしましょうか?」
いつ戻っていたのか、美玖ちゃんが割り込んできた。
「大丈夫です。それより午後の就業時間が始まってるのに今戻りですか?」
私たちが言わないことをはっきり言ってくれた。
「ちょっと体調が悪かったんで。でももう大丈夫ですから、お手伝いできますよ」
ほんとに毎度毎度、便利な妊婦さんだ。
「一階のロビーで大きな声で話していたのに体調が悪かったんですね?」
外部の人達も出入りするロビーで大きな声とは…。
「やっぱりまだ体調が悪いみたいなんで、もう少し医務室に行ってきます」
逃げ足の早い美玖ちゃんはさっさといなくなった。

柏原さんも薫と一緒に言葉を失ってしまった。

私が役員室に呼ばれるなんて。
なにもやらかしてはないはずなんだけど…。

緊張して、柏原さんの後ろから歩いていると、
「なにも覚えてないみたいですね」
なにもとは?
役員室に呼ばれるようなことは…、たぶんなにもしてない。

コンコンコン。
「失礼します、瀬戸さんをお連れしました」

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