【野暮令嬢】と侮った皆様、覚悟はよろしいかしら?
宣戦布告の準備は万端
王宮の夜会の二日前。
数日前から念入りに準備を重ねているチーム「沼」のもとに、ネルソン商会からついにドレスが届いた。
クロエの卓越したデザインセンスにより、実に細かい部分まで丁寧に仕上げられたアレンジ部分には、隣国の王家御用達の商会「MWR」のロゴの刺繍が施されている。
ドレスと共に、クロエ宛てに、王室御用達のピンズの付いたMWR商会の専属デザイナーの証である胸章も送られて来ている。クロエはその胸章を付けて私の従者として夜会に参加する。
ほぼ同時にマローネ商会から届けられた靴や扇子などの小物にも全て「MWR」の刻印が確認できる。
そして、輿入れの際に持ってきた宝石箱から、ウェーバー公爵家に伝わるターコイズの首飾りと耳飾りと、女公爵の証であるコロネット(小冠)を取り出して衣装に合わせ、トルソーに掛けられた。
明日には隣国の王太子の随行員として、隣国メイザー伯爵に叙されたMWR商会の会長である父、オスカー・ウェーバーが随行員としてやって来る。
隣国の王太子以外に、近隣国の王太子たちが招待されているのは、国王の第一王子の王太子指名を発表するつもりであることを示唆している。
王国を含む五か国は古くから同盟を結んでおり、王家同士の血のつながりもあるため、どの王家の王子もいずれかの国の王位継承権を併せ持っている。そのため、次の王たる王太子の指名には、各国の王家の承認を必要としている。こうしてお互いに牽制し合うことで他国の王位継承権を主張することを抑えているのだ。
そこで交わされるのが古代契約書である。五か国すべての王家の承認と署名を得る形式に則った羊皮紙を用いて作成される古代契約書は、この国ではウェーバー公爵家の当主と国内法で定められている。
しかし、現当主である私はその古代契約書を作成していない。
あの国王の事だ。父は隣国へ逃げたと思い込み、私は閉じ込めて表に出さない事を前提に偽造か、若しくは勝手に代理を仕立て上げて作成したのだろう。
しかし、父と私が揃って夜会に出席すればその契約書は表に出せない。
国同士の契約書の偽造が発覚すれば、王国の信用は地に落ち、それを理由に他国の王位継承者に王太子を指名する事になれば現王家は消滅する。
ウェーバー公爵家を侮り、油断し、策士気取りで稚拙な策に溺れた結果だ。
そもそも、あの祖母が年を取ったくらいで勢いを失くすはずがないのだ。
その祖母が次期公爵として鍛え上げた父が黙って国王を野放しにするはずもなければ、同じく手塩にかけて育てられた私が大人しく国王の思い通りに動く訳がない。
悉く思惑が外れた国王は一体どんな顔をして私たちの前に現れるのだろう。
二日後に迫った夜会は、ウェーバー公爵家から王家への、言わば宣戦布告の場だ。
目的は二つ。現国王と王家の不祥事を公にし、ウェーバー公爵家の汚名を雪ぐ事。
祖母の形見のドレスを身に纏い、隣国の大切な家族からの心づくしに守られ、連綿と続いて来たウェーバー公爵家の誇りを身に付けた私に、怖いものなど何もない。
数日前から念入りに準備を重ねているチーム「沼」のもとに、ネルソン商会からついにドレスが届いた。
クロエの卓越したデザインセンスにより、実に細かい部分まで丁寧に仕上げられたアレンジ部分には、隣国の王家御用達の商会「MWR」のロゴの刺繍が施されている。
ドレスと共に、クロエ宛てに、王室御用達のピンズの付いたMWR商会の専属デザイナーの証である胸章も送られて来ている。クロエはその胸章を付けて私の従者として夜会に参加する。
ほぼ同時にマローネ商会から届けられた靴や扇子などの小物にも全て「MWR」の刻印が確認できる。
そして、輿入れの際に持ってきた宝石箱から、ウェーバー公爵家に伝わるターコイズの首飾りと耳飾りと、女公爵の証であるコロネット(小冠)を取り出して衣装に合わせ、トルソーに掛けられた。
明日には隣国の王太子の随行員として、隣国メイザー伯爵に叙されたMWR商会の会長である父、オスカー・ウェーバーが随行員としてやって来る。
隣国の王太子以外に、近隣国の王太子たちが招待されているのは、国王の第一王子の王太子指名を発表するつもりであることを示唆している。
王国を含む五か国は古くから同盟を結んでおり、王家同士の血のつながりもあるため、どの王家の王子もいずれかの国の王位継承権を併せ持っている。そのため、次の王たる王太子の指名には、各国の王家の承認を必要としている。こうしてお互いに牽制し合うことで他国の王位継承権を主張することを抑えているのだ。
そこで交わされるのが古代契約書である。五か国すべての王家の承認と署名を得る形式に則った羊皮紙を用いて作成される古代契約書は、この国ではウェーバー公爵家の当主と国内法で定められている。
しかし、現当主である私はその古代契約書を作成していない。
あの国王の事だ。父は隣国へ逃げたと思い込み、私は閉じ込めて表に出さない事を前提に偽造か、若しくは勝手に代理を仕立て上げて作成したのだろう。
しかし、父と私が揃って夜会に出席すればその契約書は表に出せない。
国同士の契約書の偽造が発覚すれば、王国の信用は地に落ち、それを理由に他国の王位継承者に王太子を指名する事になれば現王家は消滅する。
ウェーバー公爵家を侮り、油断し、策士気取りで稚拙な策に溺れた結果だ。
そもそも、あの祖母が年を取ったくらいで勢いを失くすはずがないのだ。
その祖母が次期公爵として鍛え上げた父が黙って国王を野放しにするはずもなければ、同じく手塩にかけて育てられた私が大人しく国王の思い通りに動く訳がない。
悉く思惑が外れた国王は一体どんな顔をして私たちの前に現れるのだろう。
二日後に迫った夜会は、ウェーバー公爵家から王家への、言わば宣戦布告の場だ。
目的は二つ。現国王と王家の不祥事を公にし、ウェーバー公爵家の汚名を雪ぐ事。
祖母の形見のドレスを身に纏い、隣国の大切な家族からの心づくしに守られ、連綿と続いて来たウェーバー公爵家の誇りを身に付けた私に、怖いものなど何もない。