陰日向に咲く儚花

「あら〜、あなたが菫さん?いらっしゃい!」

そう言って明るく迎えてくれた慈のお母さんに、わたしは緊張しながら「初めまして、森崎菫です。よろしくお願いします。」と挨拶をした。

慈のお母さんは「慈の母です〜!よろしくね!そんなに緊張しなくていいから、ほらほら!入って!」と気さくに話し掛けてくれ、リビングへと促してくれた。

リビングは白を基調とした清潔感のある雰囲気で、大きな窓からは温かい光が射し込んでいた。

慈についてリビングに入ったわたしは、「大した物じゃないですけど、宜しかったらどうぞ。」と言い、慈のお母さんに用意して来た和菓子が入った紙袋を差し出した。

「あら!わざわざありがとう!せっかくだから、みんなで頂きましょうか!」
「菫が選んでくれた和菓子だよ。」
「和菓子なら、やっぱりあったかいお茶よね!今、お茶淹れるわね!」

そう言ってキッチンへ向かおうとする慈のお母さん。

わたしは慌てて「あ、わたしも手伝います。」と言ったのだが、慈のお母さんは「菫さんは座ってて?慈に手伝わせるから!この子、家でちゃんと家事やってる?」と言いながら、慈を連れてキッチンへと入って行った。

わたしは慈のお母さんの言葉に驚いた。

"この子、家でちゃんと家事やってる?"――――

そんな心配をしてくれるだなんて思っていなかった。

慈が優しいのは、そう言ってくださるお母さんの元で育ったからなのだと、わたしは凄く納得してしまった。

「家事は二人で協力しながらやるようにはしてるんですけど、どちらかと言えば、わたしの方が慈さんに支えられてばかりで······」

わたしがそう言うと、慈がすかさず「菫は仕事が忙しいんだから仕方ないんだよ。」と言ってくれた。

「家事なんてね、出来る方がやればいいのよ!慈がちゃんと菫さんを支えられているなら、良かったわ!」

申し訳なく思うわたしにそう言ってくれる慈のお母さん。

慈のお母さんは、慈と二人で温かいお茶を淹れると、わたしが持って来た和菓子と一緒にテーブルまで運んで来てくれた。
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