陰日向に咲く儚花
わたしはこんなに幸せでいいんだろうか。
こんなに幸せで、あとが恐ろしくなってしまう程に幸せを感じていた。
わたしは「ありがとう。」と慈に伝えると、再び慈に抱きつき、この喜びを全身で表現した。
「そんなに喜んでもらえて、俺も嬉しいよ。」
「わたし、本当に幸せ者だよ。」
「それは俺も同じだよ。菫の幸せは、俺の幸せなんだから。」
そう言ってわたしたちは抱き合い、愛おしい気持ちのままにキスをした。
それから、あっという間に年末を迎え、年末年始も関係なく仕事だったわたしたちだったが、二人で無事に新年を迎える事が出来た。
そして、1月4日に合わせた二人の休みの日。
わたしは慈と共に新年の挨拶も兼ねて、ある場所へ向かっていた。
「どうしよ···、緊張してきた。」
「大丈夫だよ。うちの母さん、そんな緊張するような人じゃないから。」
そう、今日は慈の実家に向かい、慈のお母さんに挨拶をする予定なのだ。
慈の実家は、自宅から車で一時間の場所にあった。
慈が育った家庭は母子家庭で、慈が幼い頃にお父さんが亡くなり、お母さんが女手一つで慈を育ててきたようだった。
「あ、ここだよ。俺の実家。」
慈がそう言って着いた場所は、築年数がそれほど経っていないような白い外壁の一戸建てだった。
「綺麗なお家だね。」
わたしが慈の実家を見上げながらそう言うと、慈は「2年前くらいにリノベーションしたばっかりだからな。」と言い、車から降りるとわたしの手を引き、実家の玄関へと向かった。
そして玄関の扉を開ける慈は、家の中に向かって「ただいまぁ。」と言った。
実家なのだから当然だが、慣れた様子で中へ入って行く慈に続き、「お邪魔します。」と中へ入るわたし。
すると、リビングらしき場所のドアからひょこっと姿を現した女性がいた。
「あら!おかえり!」
そう言い笑顔で出迎えてくれたのは、スラッとした体型にウェーブの入った黒髪を揺らした60代前半くらいの女性である、慈のお母さんだった。