陰日向に咲く儚花
その後わたしは、慈のお母さんの気持ちを受け取らせて頂き、慈のお父さんの写真が飾られたコンパクトな仏壇に手を合わせ、慈のお母さんが大切にしていたダイヤの婚約指輪を持ち帰った。
「本当に良かったのかなぁ······」
帰りの車の中でわたしがそう呟くと、慈は「菫に貰ってもらって、母さん喜んでたからさ。ずっと前から言ってたんだ。"あんたが結婚決まったら、お嫁さんにあげるんだ〜"ってさ。」と言った。
「大切な家宝にさせてもらおっ。」
「家宝は大袈裟だって!」
「そんな事ないよ!だって、結構大きなダイヤだよ?!それに何より、慈のお父さんがお母さんを想って贈った大切な婚約指輪なんだから。」
わたしがそう言うと、慈は「やっぱり菫は優しいよな。そんな風に思ってもらえて、俺も嬉しいよ。」と言い、それに対してわたしは「優しさなら、慈に負けるけどね〜。」なんて言い合いながら、家路についたのだった。
それから入籍日の1月13日。
わたしたちは二人揃って役所に出向いていた。
わたしの誕生日が1月10日、慈の誕生日が1月16日とかなり近い事もあり、間を取って入籍日をその日に決めていたのだ。
わたしは二度目になるが、慈にとっては初めて記入する婚姻届。
しかし、二度目でも婚姻届の記入はやはりドキドキするものがあった。
「お願いします。」
二人揃って、記入済みの婚姻届を窓口に提出する。
記入漏れなどが無いかドキドキしながら待つと、窓口のおじさんに「受理しました、おめでとうございます。」と言っていただき、わたしたちは晴れて夫婦となり、わたしは"日向菫"となった。